▲写真=朝鮮日報DB

 2025年以降、中学と高校で使用される歴史教科から「自由民主主義」「南侵で始まった6・25」が削除され問題になっているが、翌26年から初等学校(小学校)5・6年生が学習する社会科の教育課程試案からも「大韓民国の樹立」が最初から抜けていることが分かった。また「6・25戦争の原因と過程を叙述する」との指針もなくなった。初等学校では社会科に韓国史が含まれている。この教育課程が確定した場合、「児童たちが正規の教育課程で初めて韓国史に接する初等学校で、まともな歴史教育が行われなくなる」との懸念が浮上している。

 韓国教育部(省に相当)は30日にインターネットを通じ「2022年改訂初等学校社会科教育課程試案」を公開した。その内容を確認すると、「植民統治、戦争が変えた社会と生活」という単元の成就基準に「日帝植民統治と光復」や「6・25戦争」はあるが、「大韓民国樹立」はない。朴槿恵(パク・クンヘ)政権が2015年に出した教育課程には「光復後の大韓民国樹立過程を振り返り、大韓民国樹立の意義を把握する」と記載されており、文在寅(ムン・ジェイン)政権でも同じ部分で「大韓民国政府樹立」という表現が使われていた。ところが今回の試案はこの部分が最初からなくなったのだ。「成就基準」とは児童が必ず学ぶべき学習テーマを記載したもので、教科書の執筆者はこの基準を教科書に反映させることになっている。

 また6・25戦争の説明も大きく変わった。現行の教育課程ではその成就基準に「6・25戦争の原因と過程を理解し、その被害と影響を探求する」と記載されている。ところが今回の試案は「光復と6・25戦争が社会と生活に及ぼした影響を分析する」に変わった。「原因と過程を理解する」が抜けたのだ。

 今回教育課程が見直されたことについて教育部は「『初等社会科の学習量があまりに多い』という指摘が以前からあったので、今回はその内容を大きく減らし、政治史よりも生活史を中心に教育の方向性を大きく転換した。そのため該当する部分が抜けた」と説明している。実際に今回の試案における成就基準も現行教育課程の77項目から49項目へと一気に減った。また以前は成就基準に「光復のために力を尽くした人物」として「李会栄(イ・フェヨン)」「金九(キム・グ)」「柳寛順(ユ・グァンスン)」らについて詳しい説明が行われたが、今回の教育課程は学習上の負担を減らすのと同時に教師の自律性という観点から、これらの人物の紹介も全てなくなった。

 これに対して「学習量を減らすとしても『大韓民国樹立』や『6・25戦争の原因・過程』など重要な部分までなくすのは問題」との指摘が相次いでいる。成就基準にない場合、教科書執筆者の考えによってその内容を省略あるいは詳しく説明しないこともあり得るということだ。

 大邱教育大学のパク・インヒョン名誉教授は「学習量を減らす場合でも、韓国の歴史で最も重要な大韓民国建国については初等学校児童にしっかりと教えるべきだ」「教育課程の内容を減らす必要があるなら、より綿密かつ緻密に議論すべきだが、その点が足りなかったようだ」と指摘する。高麗大学教育学科のホン・フジョ教授は「6・25戦争の原因と過程、そして大韓民国建国は韓国の歴史で非常に重要な部分だが、これを教育課程からなくすと子供たちはこれらをしっかりと学べず、正しい国家観や歴史観を持てなくなる可能性が高い」と懸念を示した。

 教育部の関係者は「今回の試案は政策研究陣の案であり、今後は意見を聞き取った上で修正していきたい」「大韓民国樹立や6・25戦争の原因など、成就基準から抜けたものがあれば、今後の執筆基準などに反映することもできる」とコメントした。

キム・ヨンジュ記者、キム・テジュ記者

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