▲豪チャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授が書いた書籍の韓国語版。/写真=朝鮮日報DB

■日本、台湾、フィリピンでも介入攻勢

 中国の政治介入攻勢は東アジアでも際立っている。日本で2019年、自民党の秋元司・衆院議員が中国の国有企業「500.com」から370万円の賄賂を受け取り、懲役4年の判決を受けたのがその証拠だ。国土交通副大臣を務める有力政治家を親中派にしようとした中共の狙いは白紙となった。

 台湾では少なくとも5000人を超える中共のスパイが活動していると推定されている。最近の総統選挙では、国民党から立候補した韓国瑜・高雄市長の当選を目標に中国が数億ウォン(1億ウォン=約1040万円)相当の資金を用意し、台湾実業家を通してこの資金を用いたことが今年1月に判明した。

 中国の元スパイで2019年にオーストラリアに亡命したワン・リーチン(王立強)は「韓国瑜候補を助けるため、2018年8月からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS、交流サイト)のアカウント20万個を使って蔡英文総統と民進党に関する虚偽情報をばらまいた」と暴露した。台湾は2020年から、「外部敵対勢力」の政治介入を遮断する「反浸透法」を施行しているが、中共に買収された政治家・軍人の拘束や処罰は後を絶たない。

 フィリピンの場合、ドゥテルテ大統領の政敵であるレニー・ロブレド副大統領が2020年9月、SNSを利用した中国のフィリピン政治介入に対し公に警告した。その後、155のフェイスブックのアカウントと六つのインスタグラムのアカウントを利用して、中国がドゥテルテ大統領とその娘サラ・ドゥテルテを支援したことが確認された。親中派のサラ・ドゥテルテは、今年5月にフィリピンで行われた選挙で副大統領になった。

 中国の波状攻勢に対し、各国は防諜能力の向上で対抗している。米国の情報機関を総括する国家情報長官室(ODNI)が2021年4月に外国悪影響センター(Foreign Malign Influence Center)を設立したのが、その代表例だ。同年10月、ウィリアム・バーンズCIA長官は声明を発表し「中国任務センター(China Mission Center)を新設し、対中情報業務を強化する」と表明した。

■三つのルートで韓国政治を圧迫する中国

 焦点は、中国共産党が韓国政治にはどれほど、どのように介入・関与しているかだ。取材の結果、韓国政治への介入は三つのルートで行われていた。第1は、中国外交部(省に相当)と在韓中国大使館を中心とした公式のラインだ。この両者は各種の発言のレベルとタイミングを緊密に調整していた。

 2021年7月15日、当時の保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領予備候補が「THAAD(高高度防衛ミサイル)配備撤回を主張したいのなら、(中国は)自国の国境付近に配備した長距離レーダーをまず撤収すべき」という「水平的対中関係」を主張したことを巡って、ケイ海明・駐韓中国大使は国際外交街の慣例を破り、中央日刊紙へ寄稿を行って直ちに反論した。その後も、中国外交部の報道官はケイ海明大使の肩を持ち、擁護した。

 2020年1月末に韓国に赴任したケイ海明大使は、駐在国への信任状捧呈も終えていない状態で新型コロナに関連する韓国の一部入国禁止措置に不満を表明した。同年2月には「一部の韓国メディアや政治家が反中感情を扇動している」との暴言を吐いた。外交官が、友好の増進という本分はかなぐり捨てて韓国政治家・メディアをとがめたのだ。

 今年6月29日と30日にNATO(北大西洋条約機構)首脳会議へ出席した尹錫悦大統領を巡り、中国外交部の報道官は「仲間づくりに巻き込まれ、利用されてはならない」と発言した。しかし中国側は、中国の誤った行動を指摘する韓国政治家の発言やメディアの報道は「認められない」と突っぱねている。

 保守系与党「国民の力」の李俊錫(イ・ジュンソク)代表=当時=が昨年、ブルームバーグ通信のインタビューで「(香港の民主化デモを抑圧する)中国の残忍さ(cruelty)に立ち向かう」と発言すると、中国外交部は「香港の事務は中国の内政であって、いかなる国や組織もとやかく言ってはならない」と反発した。

宋義達(ソン・ウィダル)エディター

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