11月1日、福島第一原発6号機の前は、掘削工事中の巨大なビル工事現場のようだった。原子炉と海岸線の間の地面が深さおよそ20メートルまで掘り下げられ、そこから地下空間が果てしなく100メートル以上も続いていた。工事現場には、頭から足先まで防災用のヘルメット・マスク・服・靴でしっかり身を固めた作業員が出入りしていた。東京電力の関係者は、地下空間の鉄製の支柱の間から見える直径2.6メートルのトンネル入り口を指し示した。「来年春から福島原発の処理水を、あのトンネルを通して太平洋に放流する予定」と語った。深く掘られた巨大な地下空間で、汚染水(日本は処理水と表現)を海水で希釈した後、海底トンネルを通して海岸線から1キロ離れた場所に放流するというものだ。狭いトンネルの端では4-5人の作業員が海底下でトンネルを掘る作業を行っている、とも語った。交代で24時間工事を続け、1日10メートルずつ掘っている。現在、海底下を420メートルほど掘り進んだ。

 原発敷地のある建物の屋上に上がると、大地をぎっしり埋める、家くらいの大きさがある数百もの汚染水貯蔵タンクが見えた。事故の後、東京電力は円筒形の貯蔵タンクを建設し続け、汚染水を貯蔵した。だが今年8月に建設した1066番目のタンクを最後に、追加の建設は行っていない。最大貯蔵容量137万トンの1066基のタンクには、9月現在で131万トンの汚染水がためられている。汚染水は毎日発生するので、来年の7-8月には、もはや貯蔵する空間がなくなる。日本政府と東京電力は、自ら退路を断ったのだ。

 11年前に爆発事故が起きた福島第一原発にたまった汚染水131万トンの放流が、地域住民と最も近い隣国たる韓国の反対にもかかわらず、カウントダウンに入った。汚染水は、福島第一原発の事故で露出した核燃料を冷やしている水だ。多核種除去設備(ALPS)で汚染水から大部分の放射性物質を除去した処理水を、来年4月から放流する計画だ。日本の原子力規制委員会は、今年7月に放流計画を許可した。

 福島第一原発の汚染水を巡る論争の中心にあるのは、浄化作業を行っても除去されずに残っている「トリチウム」だ。東京電力は、処理水のトリチウムは安全だと強調する。東京電力はこの日、原発の敷地内に設置したヒラメ・アワビの養殖場を取材陣に公開した。処理水でいっぱいの八つの水槽で、それぞれ200匹のヒラメ・アワビを育てている。養殖場の責任者は「養殖場の状況は水中カメラで24時間、ユーチューブで生中継している」とし「原発の処理水でも何も問題なくヒラメがきちんと育っていることを示している」と語った。

 三重水素(トリチウム)の濃度を、日本政府が定める排出基準の40分の1以下、世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1以下にまで薄めて排出するという東京電力の計画を、国際原子力機関(IAEA)が「承認」したとも強調した。東京電力の松本純一・ALPS処理水対策責任者は「2051年までかけて処理水全量の放流を完了する計画」とし「処理水に含まれるトリチウムの年間放出量は22兆ベクレルを下回る水準とする」と語った。

 日本政府は、汚染水放流を巡る懸念に対し「他国の原発もトリチウムを放流しており、福島第一原発は放流基準を厳格に守っていて、科学的に何も問題はない」と主張する。だが福島県の住民は、依然として不安をあらわにしている。福島県漁連の野崎哲会長は最近、NHKの取材に対し「放流反対という立場に少しも変わりはない」とし「海は漁民の職場のようなところなので、東京電力側に、より具体的な説明を引き続き求める」と語った。

 周辺国に対する配慮がないことも見過ごし難い、という指摘が出ている。日本で会ったある原発専門家は「日本政府が主張しているように、科学的には、大きなプールに小さな子が1人おしっこをしても希釈されて問題ないといえる」としつつも「だがみんな一緒に利用しているプールに子どものおしっこを流す立場の日本が、まずよそに了解と同意を求めるのが筋ではないか」と語った。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員

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