中国で「ゼロコロナ政策」に反対するデモが拡大している。11月24日に新疆ウルムチの集合住宅で火災が発生し、10人が犠牲となり9人が負傷したが、その直後から「感染対策の一環で住宅を封鎖するため設置したフェンスが消火活動を妨害した」との主張が一気に広がった。その後は北京、上海、広州など中国の大都市でもコロナ封鎖解除を求めるデモが相次ぐようになった。「習近平退陣」を叫ぶ声も出始めている。3年近く続く厳しい感染対策に疲れた市民の怒りがウルムチの火災をきっかけに爆発したのだ。

 毛沢東は1958年「7年以内に英国を抜き、15年以内に米国に追い付く」という目標を掲げ「大躍進運動」を行った。現実離れした過度な経済成長率を目標にスピード戦を無理強いし、国民を追い込んでいったのだ。ありとあらゆる非科学的な方法が登場したが、その典型例が「スズメとの戦争」だった。スズメが穀物の粒を食べるという理由で掃討を命じたのだ。ところが実際はスズメが減少し食物連鎖が崩壊すると逆に米の収穫量が減り、これに自然災害まで重なったことで最悪の大飢饉(ききん)を招いた。数千万人が餓死する生き地獄となったが、地方政府は穀物生産量などについて上部に虚偽の報告を行った。それでも誰も正しいことを言えず、この政策は4年以上にわたり続いた。政治指導者が間違った判断と政策を押し通し、これに正しいことを言える勢力が存在しない場合、いかに深刻な事態を招くかを示す事例だった。

 ゼロコロナ政策はさまざまな面でこの大躍進運動とよく似ている。中国がゼロコロナ政策を推進すると、世界中が「不可能だ」と懸念の声を上げた。過去3年間に米国でコロナ対策のトップだったファウチ首席医療顧問も「中国は何の目的も最終目標もなく長期の封鎖にはいったが、これは公衆保健のためには正しくない政策だ」と批判した。しかしトップが一度方向を定めると誰もこれに異議を唱えることはできなかった。あり得ない目標を掲げて納得しがたい方法(長期封鎖)を使い、さらには信じられない統計まで広がり、住民の苦痛など意に介さずひどい政策を長期にわたり続けた点でゼロコロナは大躍進運動とさまざまな面でそっくりだ。

 人類は新型コロナと3年にわたり闘った結果、単純だが貴重な教訓を得た。優れたワクチンを選択して接種を増やし、徐々に日常を回復する方法しかないということだ。幸い新型コロナも今なお感染力は強いが重症化率や致命率は下がりつつある。それでも中国は驚くべきことに3年前に武漢で新型コロナが最初に登場した時と同じ方法にこだわっているのだ。

 中国におけるワクチン接種もずさんだ。英フィナンシャル・タイムズによると、若者はもちろん60歳以上の中国人2億6700万人のうち3分の1が3回目のワクチン接種を行っていない。副作用を恐れ接種をためらう人が多いからだという。米国では高齢者の接種率は90%以上だがこれとは対照的だ。中国が独自に開発し使用しているワクチン「シノバック」などの効果も芳しくない。今年3月に香港大学の研究チームが発表した研究結果によると、ファイザー製ワクチンの効果は84.5%だったが、シノバックは60.2%にとどまり、死亡を防止する効果もシノバックは20ポイント近く低かったという。

 習近平・国家主席が3期連続で主席に就任すれば封鎖も徐々に解除されると考えられてきたが、実際はそうではなかったため中国国民の不満も限界に達したようだ。韓国も隣国であることから、中国が不可能な政策を数年にわたり続けたことによる直接・間接の被害は決して小さくない。それでも今後しばらくはこの巨大な隣国が愚かにも時限爆弾を抱いてふらつく様子をただ不安な思いで見守るしかなさそうだ。

キム・ミンチョル論説委員

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