▲写真=朝鮮日報DB

 選挙区制の改編が熱く論じられている。公職選挙法の第21条は選挙区の数を253と規定し、選挙区1カ所から国会議員を1人だけ選出できるよう定めている。この部分を改正し、2人以上選べるようにしようという動きだ。大統領が口火を切り、国会が検討作業に乗り出した。

 勝者が独占する小選挙区制は、多様な少数意見を黙殺し、ミニ政党の議会進出を妨げてきたというわけだ。肥大した両党体制が定着した原因、韓国社会がまるで遠心分離機にでも掛けられたかのように左右両極端に走ってしまう理由も、これに起因する。

 果たして本当にそうなのだろうか。人のせいではなく、システムのせいなのだろうか。1カ所から2人以上を選ぶ中大選挙区制にしても、地域分裂が深刻化しかねないという声もある。朝鮮ドットコム、朝鮮日報ユーチューブなどに掲載された数多くのコメントを見ると、読者は選挙区制の改編よりも、現在300人となっている国会議員の定員を大幅に減らせという要求が圧倒的に多い。韓国憲法41条は、国会議員の定員を「200人以上とする」となっている。従って、そのラインまで減らせというわけだ。

 もちろん実現の可能性は低い。読者の意見が多少感情的な側面もある。しかし、有権者の率直な思いであり、飾り気のない反応でもある。それが世論というものであり、民衆たちの思いであろう。それだけ汝矣島の政治文化に大きく失望しているため、できることなら政界が作った「二極フレーム」を最大限につぶし、そこから抜け出したいのだ。

 これら民衆の思いは、さらに一歩進んで「国会解散」を主張する声として高揚するケースもある。国会は、韓国の総体的な生産性と国の品格にいい影響を与えるどころか、むしろ常にその逆方向に向かって作用したと見ているからだ。韓国憲法と選挙法には政党解散条項はあるものの、国会解散条項はない。にもかかわらず、かたくなに国会解散を叫んでいる。

 韓国憲法はフランスのものにかなり似ていた。フランス憲法第12条第1項は「フランス大統領は首相および両院の議長と協議した後、下院解散を宣言することができる」となっている。1997年、右派のシラク大統領が経済改革に拍車を掛け、政治危機を克服する目的で、下院を解散したことがある。

 韓国憲法にも1987年まで同じような条項が存在した。第5共和国憲法第57条は「大統領は国家の安定、または国民全体の利益のために必要だと判断するだけの理由がある場合には、国会議長の諮問、および国務会議(閣議に相当)の審議を経た後、その理由を明示して国会を解散することができる。ただし、国会が構成されてから1年以内の場合は解散できない」とされていた。状況は大きく異なっているものの、韓国でも3回にわたる国会解散があった。

 現在の韓国の二極化は、1945-48年の「日本による植民地支配からの解放」とは比べ物にならない。当時は本当に死活問題となる極端な理念の葛藤が中心だった。しかし、それは回避できず、克服しなければならなかった過程だ。共産主義か、自由民主主義か、子々孫々にわたる命運を決める厳しい選択だった。今でも選挙の際は、同じような岐路に立つという心情の読者もいるだろう。

 2020年の総選挙以降、韓国は重要な選挙を3回行った。2021年にソウル・釜山市長の補欠選挙、22年に大統領選挙と全国地方選挙だ。三つの選挙とも右派が勝った。このうち2回は圧倒的な勝利だった。これに勝る国民的意思表示はないだろう。左派は国家運営から手を引けとの命令なのだ。

 韓国は、選挙法を改正して行った2020年の4・15総選挙で徹底的にだまされた。政治部の記者たちも混乱していた「準連動方式の政党別比例代表割り当て」により魂を抜き取ったところ、総選挙得票率と議席占有率を大幅に乖離(かいり)させる衛星政党を生み出したのだ。国民たちは、今の選挙区制改編論議も疑わしいまなざしで見つめている。国会議員の定員が減るどころか増える可能性が高いためだ。定員を360人に拡大する改正案はすでに発議されている。

キム・グァンイル論説委員

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