▲写真=宋永吉(ソン・ヨンギル)元代表/NEWSIS

 国家のイメージの変化は個人のイメージの変化と同じような曲線を描く。活気に満ちてうまくいっている時は全てが長所のように輝いて見える。そのうち勢いが衰えると今度は長所が小さくなり、短所が拡大して目の前に迫ってくるようになる。Kポップ、Kシネマ、Kドラマ、Kクラシックなどが世界舞台で華やかな照明を浴び始めると、韓国の短所さえもまるで長所であるかのように皆が熱狂した。無法と無秩序を活気として、無礼を親近感として、基礎固めをスキップする「適当に」や「おおまかに」を韓国式のスピード感として、それぞれ賞賛してくる外国人のリップサービスに、肩をすくめるのを多々見受ける。

 大文字「K」は「韓国的」という単語に入れ替えることができる。実際、「韓国的」という単語は長い間「不明瞭」「恥ずかしい」「隠したい」という現象を示す言葉だった。「韓国的民主主義」は独裁を、「韓国的市場経済」は政治と企業が結託した賤民資本主義を、「韓国的時間観念」は約束時間を守らないことを「たいしたことではない」と考えるコリアン・タイム(Korean time)を、それぞれ意味する言葉だった。政治的イベントや各種官庁における苦情処理の過程で、食事代や餅代といった名目の下、現金封筒をポケットに忍ばすのも、「韓国的慣行」と見なされた。

 現在、韓国の区庁や町役場の請願書類の発給は、世界で最もスピーディーで透明だ。その上、田舎の高校の卒業証明書までも発給できる。IT機器の広範囲における普及がスピードを世界最高水準にまで引き上げた。では、その現場で交わされる現金封筒はいつどのようにしてなくなり、透明性を確保するようになったのか。不正を摘発する検事や警察、監査院の人員を何倍にも増やしたことによる成果なのか。

 天地開闢(かいびゃく)は、1960年代半ばに始まった経済発展の結実とともに訪れた。この部分では、経済という下部構造が意識と行動という上部構造を決定するというマルクスによる指摘は正しかった。経済発展により、公務員が安定した中産階級での生活を送ることができるだけの給与を受け取るようになると、行き交う現金封筒の数は減った。退職者のための公務員年金制度が整備され、現金封筒の誘惑に負けて老後を台無しにしてしまうケースは急減した。「韓国的」という単語に付いて回った100年前の不名誉は、こうして清算されていった。フィギュアスケートでキム・ヨナが見せた跳躍よりも奇跡的な跳躍だった。

 その奇跡が崩れようとしている。「単語」の運命は、時には予言者の啓示のように国の未来を描いている。最近使用される「韓国的」という言葉は、以前の「不明瞭で」「恥ずかしく」「隠したかった」過去の牢獄(ろうごく)に、再び収監させる道を歩んでいる。「韓国的民主主義」は停滞・混乱と同義語になりつつある。「世界史上最低」という韓国的出生率の絶壁は、消え行く国の姿をほうふつとさせる。総長・学長の直選制に汚染された大学は、下向きの平準化に向かって滑り落ちている。

 偽りを装って捜査機関に告訴・告発する虚偽告訴や、法廷で虚偽証言をする偽証、詐欺の類型と件数も、世界最高水準に迫りつつある。虚偽告訴・偽証・詐欺を束ねる土台が「うそ」という単語だ。島山アン・チャンホ氏が「死ぬことがあってもうそだけはやめよう」と声を枯らすほどに訴えた100年前の世の中に後退している。

 国民が持つ長所を最大限に発揮させれば、国はさらに高い次元へとアップする。好調だった頃は長所の陰に隠れていた短所が大量に露出すれば、国は回復不能な状態へと落ち込んでいく。政治は、長所が発揮されるように促し、短所が表に出ないよう抑制する役割を果たさなければならない。偉大な政治は国民の短所さえも長所として機能させる。アデナウアーとドゴールは、ドイツとフランスの国民の弱点を長所に変え、花を咲かせた指導者だ。国民の短所を政権維持や政権奪取のために利用する政治は最悪の政治なのだ。

 共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表によるうそは、もはや目新しいニュースではなくなった。彼が本当の言葉を語れば「数年ぶりに語った本当の言葉」と、むしろ逆にニュースになってしまうのが現実だ。民主党は「全党大会で配った300万ウォン(約30万円)の現金封筒は食事代に過ぎない」とし「大したことではない」と何食わぬ顔で騒ぎ立てている。50年前の町役場にも及ばない程度にまで後退してしまったのだ。執権勢力は旧約聖書の中のイザヤを名乗る牧師に振り回され、無力で無対策の中、総選挙で「李在明という僥倖(ぎょうこう、思いがけない幸運の意)」が現政権にとって都合のいい方向へと作用するよう期待するだけで、国民からは遠ざかってしまった。

 「国民しか希望がない」という言葉は絶望的だということを物語っている。革命しか代案がない政治は不幸な政治だ。しかし、革命さえ不可能な政治はさらに不幸な国をつくる。足元が崩壊し始めているのだ。

姜天錫(カン・チョンソク)顧問

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