▲韓国産業通商資源部の安徳根・通商交渉本部長(左)と中国の王文濤商務相が26日、米デトロイトでの会談開始前に握手を交わしている。/産業通商資源部

 米国による強硬な半導体制裁に反撃を始めた中国が韓国を取り込もうとしている。中国政府は韓中による担当閣僚会談の結果を発表し、「半導体サプライチェーン協力の強化で合意した」という内容を一方的に公表した。韓国政府は直ちに「事実に反する」と反論した。世界の半導体市場で孤立している中国が状況の打開を模索したが、むしろ自国の焦りを国際社会に露見してしまったとの見方もある。

■半導体への言及を自制した両国…中国が挑発

 中国商務省は韓国産業通商資源部の安徳根(アン・ドックン)通商交渉本部長と中国の王文濤商務相が26日、米デトロイトで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)通商閣僚会議で二国間会談を行った後、ソーシャルメディアで27日、「半導体産業ネットワークとサプライチェーン安定などについて議論した。双方は半導体産業ネットワークとサプライチェーンの分野で対話と協力を強化することに同意した」と発表した。韓国が中国と半導体分野で歩調を合わせるかような表現だ。これに対し、韓国産業通商資源部は直ちに「半導体サプライチェーンに関する具体的なやりとりはなかった」と反論した。同部関係者は「中国側の半導体分野での協力要求には『今後の実務レベルでの協議で議論が必要だ』という原則論的な回答を行った。それを一方的に歪曲(わいきょく)して発表した」と指摘した。

 韓中両国はこれまで、外交・安全保障分野で対立が深刻化する中でも、経済・通商分野では昨年6月、スイス・ジュネーブでの世界貿易機関(WTO)閣僚会議で安本部長と王商務相が初めて会い、実務レベルでの接触も続けてきた。産業通商資源部の幹部は「経済・通商分野でも半導体については、安定的な通商関係のために双方が最大限言及を自制してきた。ところが今回は中国側が会談で言及し、さらに発表文の末尾にファクト自体が誤っている内容まで盛り込んだ」と話した。通商専門家は「米中貿易紛争がエスカレートする中、韓国政府が受け入れ難い内容をこっそりと盛り込み、反応を見ようという狙いがあるのではないか」と分析した。

■米国との対立深める中国…ついに韓国に手招き

 中国が韓中の「半導体協力強化」を一方的に発表した背景には米中の半導体分野で対立する中、韓国の協力が必要なためとみられる。中国は21日、米メモリー半導体大手、マイクロンの製品にセキュリティ上のリスクが発見されたとして、購入を中断すると表明した。「チップ4(韓国・米国・日本・台湾)同盟」と「半導体支援法」などを動員した米国の一方的な攻勢に対する反撃と言える。しかし、サムスン電子とSKハイニックスがDRAMを今後数年間供給しなければ、そうした反撃は成功しにくいことから、大規模な市場を武器に韓国に向かって手招きしているのだ。サムスン電子(西安・蘇州)、SKハイニックス(無錫・大連・重慶)は中国現地に半導体生産拠点を置いているため、日欧とは異なり、韓国は米中両国の間で綱渡りをするしかなく、そうした点を計算に入れた動きとみられる。

■米中間で岐路に立つ韓国、「技術の超格差が活路」

 韓国の計算はさらに複雑だ。米国と一体で動く日本とは異なり、韓国が中国と手を組むような態度を見せれば、1980年代に米国主導で日本が半導体市場で没落したのと同じ轍(てつ)を踏む恐れがある。

 浦項工科大(ポステク)の鄭宇成(チョン・ウソン)教授は「米国がファウンドリーではインテルを、メモリー分野ではマイクロンを前面に出し、中長期的に韓国に取って代わることは十分に可能なシナリオだ」と述べた。

 中国も当面は韓国に手招きするだろうが、独自技術が確保できれば、いつでも韓国を切り捨てることができる。半導体業界関係者は「米中のどちら側に付くのか悩むのではなく、結局は技術の超格差を維持することだけが韓国半導体の活路だ」と話した。仁荷大の鄭仁教(チョン・インギョ)教授は「今後も中国に対しては、特定の意図に巻き込まれないという原則を堅持すべきだ」と述べた。

趙宰希(チョ・ジェヒ)記者、朴淳燦(パク・スンチャン)記者、北京=李伐チャン(イ・ボルチャン)特派員

ホーム TOP