▲2023年5月、キーウ市内の執務室で、チョン・チョルファン朝鮮日報欧州特派員のインタビューを受けたウクライナのゼレンスキー大統領。写真提供=ウクライナ大統領室

 「70年余り前、韓国が他国の助けを切実に必要としていた時を思い出してほしい。当時、正義と自由を守るために全世界が韓国に救いの手を差し伸べたから、自由で民主的で繁栄している韓国が誕生した。今のウクライナは70年前の韓国と同じだ。この事実を忘れないでほしい」

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45)とのインタビューは首都キーウの執務室のうちの1カ所で、独占で行われた。正確な場所は分からない。市内の某所で大統領室のセキュリティー要員と接触後、窓を覆った黒いバンで移動し、数回のセキュリティーチェックを経て、さらに20分余り待った。すると、ゼレンスキー大統領が姿を現した。「戦場の大統領」を象徴する軍服姿だった。Tシャツにはウクライナのサイバー保安機関名である「UA30」と書かれていた。戦場での対面インタビューは異例のことだ。

 ロシアによるキーウの夜間空襲が激化する中で会ったゼレンスキー大統領は、韓国国民と韓国政府に向かってウクライナ支持を訴えた。韓国が6・25戦争(朝鮮戦争)の廃虚から復興し、わずか2世代で世界10大経済大国になった事実に言及し、「戦争と紛争を経て廃墟から立ち上がった国の経験から学びたい。韓国はそうした国の一つだ」と繰り返し強調した。

 昨年2月のロシアからの侵攻以降続いている激戦で、ゼレンスキー大統領が先日、「残っているものはない」と表現した東部戦線バフムトなどと比べれば、キーウの状況はましな方だ。 それでもキーウは昼夜を問わずますます激しくなる空襲でサイレンの音が鳴りやまず、都市のあちこちに被害が出ている。爆薬のにおいが日常となったキーウで、ゼレンスキー大統領は「韓国は戦争とそれによる犠牲、復興の過程を経験したので、今、私たちが直面している状況をよりよく理解してくれていると思う」「戦後、韓国国民が平和で正常な生活に戻り、苦痛と傷が癒え、再建していく過程で、(韓国の経験を生かして)多くの協力が実現すると信じている」と何度も「再建」構想を語った。

 質問に休むことなく答えていたゼレンスキー大統領だが、韓国政界のウクライナ支援と関連した賛否論争について聞くと、しばらく沈黙した。そして、呼吸を整えて「韓国の(政治家ではなく)一般の人々は侵略を受けた側の立場をよく知っているため、自らを守ろうともがいているウクライナの人々を支持すると思う。それが正義だからだ」と答えた。その上で、「ウクライナは国家として、韓国に対して非常に明確な見解を持っている。我々は韓国の味方だ。私とウクライナは韓国を天秤(てんびん)にかけない。韓国を支持し、韓国と共に発展していこうと思っている。韓国国民も我々と同じように、統一した見解を維持してくださるよう切に願う」と言った。

 ゼレンスキー大統領はインタビューで、韓国の人道支援に感謝の意を表した。戦後のウクライナ経済再建のため、韓国と協力できれば良いと思う分野については「ウクライナが保有している資源と韓国が保有している技術を考えると、リチウムバッテリー分野で大きな成果を出せるとみている」と非常に具体的に説明した。

 以下は一問一答。

-ウクライナの戦後再建過程で韓国とはどのような協力が可能でしょうか。

 「戦争の廃墟から立ち上がった韓国の経験を学び、それと結び付けて国を再建していこうと思う。安保と防衛産業、先端技術とサイバー空間、そして戦後の国民の復興過程で多くの協力ができるだろう。グリーンエネルギーとグリーンスチール分野の協力にも大いに関心がある。今後、ウクライナが保有している資源と多くの埋蔵物、韓国が持つ技術力を考えると、リチウムバッテリー分野が有望だと思う。ウクライナでリチウムを採掘するだけでなく、関連製品の生産も可能だ。我々は旧ソ連時代からリチウム生産のための施設を持っている」

-韓国政府のウクライナ支援に対する評価は? (韓国はロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナに2億3000万ドル〈約320億円〉以上の人道的支援をしてきた。最近では地雷除去装置などの追加支援を約束した)

 「まず、韓国政府と国民のウクライナ支援に心から感謝する。戦争を経験した韓国は我々のことを(他国より)もっとよく理解してくれていると思う。現在、ウクライナの面積の約3分の1が地雷で覆われている。多くの農民、民間人、子どもたちが、ロシアが設置した地雷によって命を落としたり、障害を負ったりしている。地雷除去装置は人々の命を救う、ウクライナにとって非常に重要な防衛システムの一つだ。韓国が支援することを決めた地雷除去装置は多くの農民と子どもたちの命、そして手と足を救うだろう」

キーウ(ウクライナ)=チョン・チョルファン特派員

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