▲2023年5月、キーウ市内の執務室で、チョン・チョルファン朝鮮日報欧州特派員のインタビューを受けたウクライナのゼレンスキー大統領。写真提供=ウクライナ大統領室

-まだ韓国の支援は人道的な次元にのみとどまっています。これに関して残念に思うことはありますか。

 「武器支援に関してさまざまな限界があることは分かっている。ただし、私は韓国のこのような原則が(韓国がまだ支援していない)防衛システムや電力システム保護装置などに適用されてはならないと思う。対空防衛システムは武器ではなく純粋な防衛装置だ。ウクライナの再建のためには、『空の盾』が不可欠だ。韓国がこの分野で我々を支援することを切に願っている。また、ロシアの空襲を警告する早期警報システムもあるが、これにも韓国の助けが必要だ」

 ゼレンスキー大統領は敵国のトップであるロシアのプーチン大統領に対して、率直な感情を吐露した。ロシアの核による脅しが続いていることに対する自身の判断、中国の平和仲裁努力に対する評価、ロシアと中国の間で起こっている偽善的な行為に対する指摘も果敢に口にした。これまでの海外メディアとのインタビューではほとんど語っていないことだ。

-ロシアでは西側諸国の核の脅威を理由に、ベラルーシに戦術核の移転を開始しました。どう見るべきでしょうか。

 「今のウクライナには何の意味もない。ロシアが核で脅すのは一度や二度ではなく、あまりにも長い間繰り返されてきたため、ウクライナはもはやロシアの核兵器関連の脅威と措置を恐れることはない。ベラルーシに戦術核を移転することも、ウクライナと欧州を脅す『政治的策略』に過ぎない。他国の領土主権を侵害して核兵器を脅しに使うことはあってはならない。これに対して全世界が同意しているが、ロシアは絶えず核の脅威を『伝家の宝刀』のように振り回している。(核を悪用した)政治的脅迫は、彼らにとって残された唯一の手段だ」

-ロシアと中国の関係が密接になっていますが、戦争にはどのような影響があるでしょうか(プーチン大統領と習近平・中国国家主席は今年3月、ロシアで首脳会談を行った)。

 「中国は『外』のどこかで、西側とロシアの間で綱渡りをしようという考えだ。しかし、プーチン大統領はどうしただろうか。習近平主席との会談で、『領土の外の核兵器配備に反対する』と言っておきながら、すぐその翌週にベラルーシへの核配備を発表したのではないか。ロシアは自国とある程度近しかった国々、ロシアを正直な同盟国と考えた国々に対してもウソをつくことをあらためて強調したい。核をめぐるロシアの言葉はただの政治だ。それも失敗した政治、間違っている政治だ」

-4月に習近平主席と電話会談をしましたが、中国は仲裁者としての役割をきちんと果たせるでしょうか。

 「中国は直接的にはウクライナの立場を支持していないのが現実だ。中国が自主的に立てた平和イニシアチブ(青写真)について、我々は『平和のための他国のいかなる努力にも感謝するが、我々自身の平和の公式、我々のイニシアチブが基本だ』と明確に述べた。この戦争はウクライナで始まり、ここで続いているからだ。もし中国が『ロシア軍はウクライナのすべての領土から撤退しなければならない』という明確で強い見解を明らかにすれば、その場合にのみ私たちの役に立つことができると思う」

-プーチン大統領の最終目標は何だと思いますか。

 「『ソ連の回復』。それが彼の人生の目標だ。これを外交的に実現する方法がないため、あらゆる脅迫やエネルギーの武器化などを試みてきたが、ほとんど成功していない。だから、(ウクライナ侵攻を通じて)露骨な侵略者になる方法を選択した。多くの民間人を殺し、拷問し、原子力発電所を占領して核災害の脅威まで行っている」

-プーチン大統領と会う意向はありますか。

 「彼は2年近く私と電話で話すことさえ避けている。理由はただ一つだ。言うことがないからだ。真実は我々と共にあり、彼は真実の前で話す言葉がない。プーチン大統領は、ウクライナを強制的に奪おうとする自身の意地に論争の余地がないことをはっきりと知っている。 それで私と何の話ができるだろうか? プーチン大統領は戦争によるウクライナ侵奪、ウクライナ人のアイデンティティー(Ukrainianness)の破壊を望むだけだ。プーチン大統領の次の目標はベラルーシだ。ベラルーシを少しずつ飲み込もうとしている。今のプーチン大統領は明らかに、我々がかつて見ていたのとは別の人間だ。プーチン大統領が自身の軍隊をウクライナ領からすべて撤退させる前に、彼と対話するのは難しい」

-最後に韓国国民に伝えたいメッセージは?

 「私とウクライナ国民は韓国に対して非常に良い認識を持っている。韓国人は数多くの挑戦と苦痛を乗り越え、強くて勇敢な国家、先端技術を先導する経済を作った。韓国は一言で言えば『素晴らしい国』だ。かつての韓国のように、我々も今、突然の侵略から生命と自由を守るための壮絶な闘争を繰り広げている。これこそ、私が今、韓国国民に伝えたい言葉だ」

キーウ(ウクライナ)=チョン・チョルファン特派員

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