北朝鮮の宇宙発射体(ロケット)が31日に西海に墜落したが、その原因はロケットの技術的欠陥と推定されている。北朝鮮は宇宙ロケットと技術面で共通する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射にはこれまで何度も成功しているが、今回の失敗により現時点で長距離ロケット技術は完全な段階に至っていないことが分かった。7月21日の戦勝節(6・25戦争停戦協定締結日)70周年に向け祝勝ムードを高めたい金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長からの圧力などもあり、北朝鮮は早急に無理して打ち上げを強行し、結局自ら失敗を招いた可能性も考えられる。

 北朝鮮国家宇宙開発局は31日、異例にも打ち上げから2時間30分後に「第1段ロケット分離後に第2段ロケットのエンジン点火に失敗し、推進力が失われ西海に落下した」と発表した。「千里馬(チョンリマ)1型」と呼ばれる新型エンジンと燃料に事実上の技術的欠陥があることを認めたのだ。技術面での準備が完璧ではない状態で打ち上げを急いだことを示唆したもので、「金正恩の圧力」など政治的な要因がより強く作用した可能性も考えられる。

 韓国の情報機関である国家情報院もこの日、国会情報委員会への報告で「北朝鮮は過度に西寄りの経路を設定しながら、横機動により無理して東へと経路を変更したため技術的な問題が発生した可能性が考えられる」と説明した。国家情報院はさらに「ヌリ号の打ち上げ成功に刺激を受け、通常は20日ほどかかる準備期間を数日に短縮し、(打ち上げを)急いで強行したことも(失敗の)一つの原因になった」とも報告した。

 通常だと第1段ロケットは強い推進力で第2段ロケットを分離する位置まで飛ばせばその役割を終え分離される。その後は第2段ロケットが直ちに点火し、衛星を乗せた第3段ロケットを大気圏上空まで飛ばす。北朝鮮の説明が正しければ、第1段ロケットは計画通り分離されたと考えられる。韓国国家戦略研究院ミサイルセンターの張泳根(チャン・ヨングン )所長は「第1段エンジンは正常に作動して分離したが、第2段エンジンの点火が計画通りいかず推進力が得られなかった」「そのため第1段ロケットと衛星発射体の胴体(第2・第3段ロケットと人工衛星)が全て推測落下地点近くに墜落したと推定している」と説明した。

 北朝鮮は31日「できるだけ早期に2回目の打ち上げを断行する」と発表した。国家情報院は「エンジントラブルのチェックには通常だと数週間以上はかかるはずだが、欠陥が重大なものでなければ早期に打ち上げる可能性も排除できない」との見方を示した。一部では北朝鮮は当初人工衛星打ち上げ期間を6月11日までと予告したため、その最終日前にも2回目の打ち上げが行われる可能性を指摘する見方もある。北朝鮮は2012年4月に宇宙ロケット「銀河3号」の打ち上げに失敗したが、それから8カ月後には再打ち上げに成功している。

 北朝鮮が偵察衛星に執着する理由は、韓米軍の最新動向など戦争の準備や戦闘に必要な情報の収集が目的とみられている。ある韓国軍関係者は「北朝鮮が軍事衛星を手にすれば、韓半島に展開する米軍の戦略資産(兵器)をはじめ、パトリオット・ミサイルの発射台など韓国に配備された主要な戦力の位置やターゲットを今よりも早く正確に把握できるようになる」と指摘した。北朝鮮は戦術核ミサイルを含む韓国攻撃用の兵器はすでに開発したが、そこからさらに偵察衛星まで手に入れれば、攻撃を行う際の「目」と「拳」をいずれも確保するということだ。最終的には韓米の偵察衛星や早期警戒衛星、GPS(衛星利用測位システム)衛星などをかく乱し無力化する「キラー衛星」の開発など、本格的な宇宙戦争に必要な戦力の確保を目指しているとの見方もある。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

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