▲写真=UTOIMAGE

 韓国人たちが4月、劇的な脱出に成功すると、内戦に苦しむアフリカ・スーダンに対する韓国人の関心が冷めやった。しかし、遠い国の出来事だと高をくくる前に、スーダンの失敗を冷静に見つめ直してみる必要性がある。韓国が属している自由民主主義陣営が、今どれほど負け試合を演じているかを示す象徴的事件であるためだ。

 7カ国と国境を接するスーダンは、侵略・内戦・独裁などアフリカの低開発国の慢性的な問題に終始悩まされてきた。1990年代にはテロリストの本拠地として悪用され、米国のミサイル爆撃も受けた。そのようなスーダンの国民と軍部が2019年、30年間にわたって独裁を繰り広げてきたアル=バシールを追い出し、民主主義の道を選択した時、自由陣営は歓呼した。「民主主義クラブ」に久しぶりに新しい会員が合流するという朗報と考えたのだ。

 あれから4年、一度も選挙を行ったことのないスーダンの民主主義は、軍部による権力争奪戦がもたらした内戦とともに枯死した。米大使館の職員たちは内戦の兆しを感じるや、いち早くヘリコプターで脱出した。外交シンクタンクのウォルター・ミード氏はスーダンの問題に対する民主主義宗主国である米国の無能さを指摘し「この15年間、中東・アフリカで試みられてきた民主化はほぼ崩壊した。ハムスターが原子力潜水艦の建造に成功する確率の方が高いと思われる」とこれを皮肉った。

 最近、国際ニュースで取り上げられているキーワードは「民主主義の失敗」だ。一日も休むことなく関連ニュースが報じられている。ここ2カ月間で起きたニュースを取り上げてみた。2011年に「アラブの春」を開いたチュニジアでは、大統領が鉄拳統治に転じ、4月に野党代表を逮捕した。2010年に議会民主主義を採択したパキスタンでは、実力者の軍部が昨年首相辞任を主導したのに続き、先月結局彼を拘束した。一時「イスラム民主主義」の模範だったトルコ(テュルキエ)では「セルフ改憲」により選挙の規則を変更したエルドアン大統領が先月再選し、終身執権の道を固めた。ようやくのことで民主主義を勝ち取ったウクライナは、全体主義の代表国ロシアに領土が踏みにじられている。

 天安門事件30周忌を迎えた6月4日、中国当局による弾圧で追慕デモが跡形もなく消え去った香港の風景は、香港で民主主義の炎が今や完全に消えてしまったことを匂わせた。米国では大統領選挙での敗北に従わなかったドナルド・トランプ元大統領が最近検察により起訴(2件)され、あらゆるセクハラと虚構があからさまになった。しかし、同元大統領の(共和党内での)支持率は約60%と、むしろさらに上昇した。民主主義の守護国とされてきた米国も、国政が不安定であるということを物語る事例だ。

 フィナンシャル・タイムズの首席エコノミストであるマーティン・ウルフ氏は最近出版した書籍『民主的資本主義の危機』で「民主主義は現在、扇動的独裁にその座を奪われようとしている」と書いた。「ナチスの迫害を避けて米国に移民した(ユダヤ人の)両親は、民主主義が圧勝したという安堵(あんど)感の中、1990年代に永眠した。しかし、孫たちがいつの日か迎えることになる22世紀は、一体どんな世界だろうか。私は自然災害や核戦争と同じくらい全体主義がまん延する未来が怖い」。政治研究所である「民主主義の多様性」による集計結果、民主化が進行中の国は2002年の43カ国から昨年には14カ国へと大幅に減った。一方、全体主義化している国家は13カ国から42カ国へと急増した。何もウルフ氏だけの懸念なのではなく、自由陣営が本当に負け越しているのだ。

 自由民主主義は生まれつき危なっかしさを抱えている。「個人と思想の自由」のような抽象的価値よりも、味方をえり分けて扇動し合う全体主義的「憎悪の動力」が、さらに魅惑的であるためだ。民主主義の没落を懸念した経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは「民主主義がもし維持されるなら、少なくとも二つの条件を満たさなければならない」と書いた。政治家自身の高い資質と強固な官僚組織の構築だ。果たして韓国の民主主義は安全なのか。来年の総選挙を控え、今取り沙汰されている驚くべき人物の出馬説、そして公務員組織の根深い腐敗と無能に関するニュースを目の当たりにするたびに不安な思いに駆られるのだ。

キム・シンヨン国際部長

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