▲イラスト=UTOIMAGE

 「関東大震災での朝鮮人虐殺は『のどに刺さったとげ』のようなものです。この問題を隠したまま日本と韓国、両国が真に和解することはできないでしょう」

 最近東京で会った立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員(65)は「真の和解をしようと思うなら、(日本が)歴史的事実から目をそらしてはならない」とし「歴史と向き合い、誤りがあれば認めて謝罪し、新たな日韓関係をつくる契機にすべき」と語った。関東大震災での朝鮮人虐殺事件は、1923年9月1日にマグニチュード7.9(推定)の大地震が東京を襲った後、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というような流言飛語が広まり、数多くの朝鮮人が日本人によって殺害された事件だ。日本政府は公式調査や謝罪をしていない。

 日本政界で朝鮮人虐殺はタブーのように見なされている。そうした中、TBS記者出身の杉尾議員(当選2回)は今年5月、国会で谷公一・国家公安委員長に、関東大震災当時の朝鮮人虐殺について政府レベルの調査を求めた。日本の国会で議員が関東大震災における朝鮮人虐殺問題を公論化したのは、この100年で初めてだ。

-政治家らが嫌う朝鮮人虐殺問題を公論化した理由は。

 「政治家になる前も、関東大震災のとき、流言飛語のせいで多くの朝鮮人が虐殺されたという歴史的事実は知っていた。ただ、日本政府がこれについていかなる立場なのかはよく知らなかった。調べてみると、『(朝鮮人虐殺は)政府が調査したところでは事実関係を把握する記録を見つけられない』という立場であると。記録すら認めず、明らかな誤りにもかかわらず100年間、関連の国会質疑・応答は一度もきちんとなされていない。非常に驚いた」

-朝鮮人虐殺は日本の歴史教科書にも載っている歴史的事実ではないか。

 「その通りだ。日本の歴史教科書には、警察・憲兵といった公的な立場の人々が(虐殺に)加担したと書いてある。2008年に内閣府傘下の中央防災会議が出した報告書にも、朝鮮人・中国人虐殺について記述がある。中央防災会議の報告書は、政府に依頼に基づいて出された報告書だ。それにもかかわらず否定する。国会図書館にも公式な記録がある。その写しを見せてもらって国会で質問したが、政府の答弁は『記録を見つけ出せない』だった。資料をもっと集めて、9月に開かれる国会でもう一度問題を提起する考えだ」

 杉尾議員の語る「国会図書館の公式記録」とは、いわゆる「斎藤実文書」のことで、斎藤実が朝鮮総督を務めた1919-27年、29-31年の間に記録された公式文書の一部を指している。当時、朝鮮総督府による調査の結果、少なくとも813人が虐殺されたとする記録がある。

-記録があるのに政府はなぜ否定するのか。

 「(日本の政権与党は)右派に対し非常に神経を使っているようだ。賠償という問題につながるのではと懸念しているようでもある。太平洋戦争も、当時日本は巻き込まれたのでやむを得ず起こした戦争だ、という人々が(右派の中には)存在する。侵略戦争ではない、という形式だ。関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺も、そうした歴史修正主義の中にある。不都合な真実を避けているわけだ」

-韓日関係が改善されている。日本も変わるべきではないか。

 「日本政府が歴史的事実を認めてあらためて謝罪談話を出すべきだと思う。だが現時点では、岸田内閣が謝罪する可能性はないものとみえる。私の(朝鮮人虐殺に関する)問題提起も、国会議員個人の資格でやっていることであって、立憲民主党の党論ではない」

-100年も経過した事件についての謝罪が現実的に可能なのか。

 「関東大震災100周年の今を逃したら、永遠に(謝罪の)機会はないだろう。韓国の1人当たりの国民総生産(GNP)は日本を追い抜こうとしている状況なのに、日本では民族的なコンプレックスのようなものが出てきて、『韓国に謝罪せよ』という話が出るだけで私のような政治家が集中的に非難される。だが『過去に目を閉ざす者は結局現在にも盲目となる』という、故リヒャルト・フォン・ワイツゼッカー初代統一ドイツ大統領の言葉のように、いま一度掘り返して学ばなければならない。中央防災会議の報告書には『大きな災害が起きたとき、民族差別のせいで再びこうしたことが起きることもあり得る』という内容も含まれた。在日韓国人に対するヘイトクライム(hate crime・憎悪犯罪)のように、こんにちまでつながっている課題でもある」

-虐殺の再調査を韓日が一緒にやってはどうか。

 「韓国政府が日本政府に『100年なのだから朝鮮人虐殺を一度もっときちんと調査してもらえないか』と提案するのであれば、悪くない案だと思う。一方では、韓国と日本が紆余(うよ)曲折の末に最近関係回復をしているように見えても、依然としてそれほどの話をする雰囲気ではないという思いも抱く。仮に韓国が要求しても、日本が『そうしてみましょう』と答えるほどに、両国政府が親しい関係にあるわけはないらしいという意味だ。両国関係が以前より良くなったと言っても、日韓関係の現実はやはりこの程度ではないかと思う」

成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

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