▲韓国の尹錫悦大統領(写真左)と日本の岸田文雄首相(同右)が2023年8月18日(現地時間)、ワシントンに近い米国大統領の別荘「キャンプ・デービッド」で韓米日首脳共同記者会見を終えた後、握手をしている様子。中央の後ろ姿はジョー・バイデン米国大統領。/写真=聯合ニュース

 8月18日のキャンプ・デービッド韓米日首脳会談は、東アジアの戦略的構図と力学関係を再編する世紀の事件だ。ここで3カ国協力のビジョンと原則、目標、履行体制などを明示した三つの文書が採択されたのは、わずか1年前の時点では想像し得なかった外交的異変だ。

 こうした異変は、東アジアの時代的要求と、これに応えようとした3カ国首脳の絶妙な意気投合が作り出した作品だ。特に、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が国内の政治的な負担を押し切って韓日関係の改善のため無謀かつ果敢な賭けに出たことが、キャンプ・デービッドに向かう道を開いた-という点に異論はない。歴代の米国政権が20年以上も、3カ国協力体の樹立に向けて至大な力を注いだが、韓日間の過去史を巡る反目と対立が実現を阻んできた。米国のジョー・バイデン大統領は、尹大統領が韓日関係のしこりを解きほぐした成果を3カ国首脳会談につなげるリーダーシップと瞬発力を発揮したことにより、東アジア外交の宿願を達成した。同盟を「寄生虫」と見なすドナルド・トランプが大統領であったなら、到底あり得ないだろう。日本の首相が安倍晋三の追従者でなかったことも幸いだった。

 3カ国間の安全保障協力を可能にする政治的原動力は、3カ国が共有する脅威認識から出てきた。そうした点で、習近平と金正恩(キム・ジョンウン)も主役に劣らぬ助演の役割を果たしたことになる。習近平が「中国の夢」を掲げ、攻勢的な膨張政策で域内の安全保障不安を醸成し、韓国の防衛主権を否定する横暴を働いていなければ、米日の中国けん制戦略に韓国が快く加わることは難しかっただろう。また、金正恩が核ミサイル戦力の増強と技術の高度化に狂ったようにのめりこんでいなかったら、日本との軍事協力拡大と制度化は、韓国の国内政治的に無理な発想だった。

 では、3カ国協力体の発足で何が変わるのだろうか。韓国が得た最大の利益は、中国に対するレバレッジ(leverage、てこの作用)を強化し、覇権的横暴や経済的強圧に振り回されない保険を得たことだ。3カ国協力体は、軍事同盟とは隔たりがあるが、3カ国の利益と安全に対する域内の「挑戦・挑発・脅威」がある場合、対応策を調整するため速やかに協議をすることとしている。これは、中国が韓国を脅迫しようとしたら3カ国の共同対応を覚悟せねばならないことを意味する。また、中心的な素材・部品の供給網かく乱に対応する体制を整備することで、中国の経済的強圧をけん制するレバレッジも強化された。米国のインド・太平洋政策に対する韓国の発言権も強化された。特に、米国が中国の脅威を誇張して過剰対応を試みる場合、韓日両国が共同でこれを緩和する枠組みを提供してくれている。

 一部で「米日との密着が中国の反発を招き、韓国外交独自の空間を制約する」という懸念も提起されているが、中ロ朝3カ国の結束が強化されている状況で、レバレッジを犠牲にして身動きの幅を広げたところで、プラスになることはない。中国を「高い山の峰」として受け入れ、「中国の夢」に追従するのであれば、中国の反発は避けられる。しかし、反発を避けようとしてレバレッジを放棄したら、屈従を自ら招くだけだ。

 北朝鮮も、これまで民生を犠牲にして開発してきた核ミサイルを使うのが一層困難になった。3カ国間のミサイル警報データのリアルタイム共有と共に合同演習を定例化したことによって、北朝鮮が核ミサイル発射を試みても、これを一層効率的に探知・迎撃できるようになったからだ。また、北朝鮮のハッキングと暗号資産窃盗を遮断する実務グループが立ち上げられたことで、北朝鮮の違法な外貨稼ぎはさらに困難になった。キャンプ・デービッド共同声明が「自由で平和な統一韓半島」を支持していることも注目される。統一の方法についての言及はなく、統一の最終状態のみを明示したことも特異で、日本が韓半島統一を共同声明を通して明示的に支持したのも初めてだ。

 だが、3カ国協力体の発足は素晴らしいが、その土台は微弱極まりない。来年11月の米国大統領選挙でトランプが当選する惨事が起きたら、3カ国協力は動力を喪失する。韓国で反日根本主義勢力が政権を取ったら、韓日関係は無事ではあり得ず、韓日関係が破綻したら3カ国協力も終わる。3カ国協力を覆し難いものにしようと思ったら、これを内実化し、韓日関係の潜在的悪材料を除去しなければならない。独島に対する日本の所かまわぬ領有権主張や東海表記問題が、3カ国協力の雰囲気を壊しかねない。従って、独島問題での韓日の摩擦を軽減する案として、韓日間の海洋境界協定の締結を試みる必要がある。2016年の常設仲裁裁判所(PCA)の南シナ海領有権紛争判決を援用すれば、独島が韓国の排他的経済水域(EEZ)に入る解法を見いだすことができる。東海で韓米日間の合同軍事訓練を実施しようとしても、訓練海域の表記問題が本質を色あせさせる突出した悪材料になりかねない。海洋境界協定と東海表記問題を一括妥結させる案も検討する必要がある。

千英宇(チョン・ヨンウ)元韓国大統領府外交安保首席・韓半島未来フォーラム理事長

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