■ネットフリックスドラマ『京城クリーチャー』

 どれほど高価な名品で飾っても、互いに調和していなかったらワーストドレッサーになるのは当然だ。制作費700億ウォン(現在のレートで約76億円)を投じたネットフリックスドラマ『京城クリーチャー』は、トップスターのパク・ソジュン、ハン・ソヒが出演し、日帝強占期が舞台の「クリーチャー物」という斬新な設定で期待を集めた。大々的なマーケティングと共に、12月26日にはネットフリックスのテレビシリーズ部門で世界1位(FlixPatrol調べ)になったが、当の作品を見た韓国の視聴者は酷評を浴びせている。ブロックバスター級のスケールと華麗なビジュアルで注目を集めはするが、時として内実を伴わない、ネットフリックスコンテンツの弱点をあらためて露わにした。

■『キングダム』『Sweet Home』が混じっているかのような既視感

 『京城クリーチャー』は、1945年の京城で起きる婦女子失踪事件を追跡していく中で、正体不明の怪生命体と遭遇することになるという物語だ。日本の731部隊による生体実験の果てに怪物が誕生したという設定は一見もっともらしいが、目の肥えた視聴者を満足させるには不十分だった。

 最大の欠点は「既視感」だ。ネットフリックスの代表シリーズである『ストレンジャー・シングス 未知の世界』から『キングダム』『Sweet Home -俺と世界の絶望-』『ミスター・サンシャイン』に至るまで、この作品には少しずつ似たところがある。成功したドラマのヒット公式をAI(人工知能)が選び出し、適切に再調整したかのように、ありふれたクリシェ(ありきたりな決まり文句)にまみれている。「汚い朝鮮人」と主人公を悩ます日本のやくざと警察も、陳腐に感じられるばかりで脅威ではない。物語が予想通りに進むので、先の展開が気になるはずもない。

 怪物に追われる緊迫した状況においてもロマンスとコメディー、家族愛が臆面もなく割り込んでくる。さまざまなジャンルを混ぜ合わせたドラマが主流だとはいっても、おいしく混ぜ合わせたビビンバではなく、正体の分からないごった煮になってしまった。美女たちの求愛を受けてもびくともしなかった京城最高の金持ち、チャン・テサン(パク・ソジュン)は、行方不明者を探す私立探偵のユン・チェオク(ハン・ソヒ)に一目ぼれし、早くも第2話で命懸けの危険を冒す。ハン・ソヒの美しさに蓋然性があれば言うことはないが、逃亡の最中に飛び出す「私、好きですか?」のようなせりふには、ときめくどころか眉をひそめてしまう。気味の悪い怪物たちを叩きのめすクリーチャー物の爽快感を期待していたファンにとっては、「母性愛が残っている怪物」というのも当惑するばかりだ。

 ストーリーに入り込めないので、CGやセットにしばしば目が向く。新しく作られた気配がぷんぷん漂う巨大なセットは、番組に自然に溶け込んではおらず、技術力では『Sweet Home』の怪物にひけを取らない最先端CGもまた、1940年代という舞台と調和せずに浮き上がっている。

 『京城クリーチャー』は、全10話中7話を12月に先行配信し、残る3話を1月5日から配信する予定だ。『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』のようにパート1とパート2に分けて配信することで、既存の視聴者を捕まえておきつつ話題性を引っ張り続けようとする戦略だ。だが、7話に圧縮してもいい内容を引き伸ばし編集することで、OTT(オンライン動画配信サービス)ドラマの利点であった「スピード感」が失われている。

■海外では「新鮮」という好評も…日本では?

 韓国国内の酷評と比べると、海外では「新鮮」という反応が出ている。日帝強占期が舞台の時代劇に慣れ親しんでいない外国人であれば、目新しく映ってもおかしくない。逆に、日本の映画評論サイト「Filmarks」では評点2.5(5点満点)にとどまり、悪質コメント同然の酷評が付いていた。「不自然な日本語だから笑いしか出ない」「韓国がまた歴史を歪曲(わいきょく)しようとしている」「パク・ソジュンのファンだったけど失望した」等のコメントが多数を占める。なお、少数意見ではあるが「この作品を通して731部隊の存在を知った。悲劇が二度と繰り返されないことを願う」といった前向きな反応もあった。

 韓国は昨年、ネットフリックスのコンテンツ生産基地といえるほど多くのオリジナルコンテンツを制作した。映画・ドラマ・バラエティーを合わせると計28本に上り、2週間に1本のペースで新たな作品が登場した。『配達人 ~終末の救世主~』『セレブリティ』をはじめシーズン2が出た『D.P. -脱走兵追跡官-』『Sweet Home』に至るまで、話題にはなったが完成度の面では失望させられる作品が多かった。大衆文化評論家のチョン・ドクヒョンは「韓国的なカラーは徐々にぼやけていき、ネットフリックスの傾向に合う刺激的なコンテンツばかり作り出されて、韓国国内の視聴者から高い評価を得られていない」とし、「ネットフリックスの韓国コンテンツ制作は前向きなことばかりなのかどうか、再度考えてみるべき」と語った。

ペク・スジン記者

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