▲共に民主・李在明代表(2024年2月5日撮影)ニュース1

 韓国の進歩(革新)系統最大野党「共に民主党」の国会議員選挙制度決定は、韓国の民主主義の歴史にまた一つの大きな汚点を残す、深刻な問題だ。選挙制度は、国民の代表をどのようなやり方で選ぶかを決めるものだ。民主主義を維持する上で根幹となる制度で、国の未来にも大きな影響を及ぼす。世界の民主主義国であれば与野党の合意に基づいて決定するのが当然で、韓国も1980年代の民主化後、ほとんどはそうしてきた。ところが、その重要な一件を、一政党が意のままに決定した。サッカーの試合のルールを片方のチームが一方的に決めたに等しい。それも、ある一人の人間が決めた。軍事独裁と、何が本質的に違うのか。

 李在明(イ・ジェミョン)代表は5日、来たる4月の総選挙で準連動型比例代表制を維持し、汎(はん)野党の衛星政党を作りたいと宣言した。民主党では、準連動型維持と並立型回帰を巡って激論が続き、李代表に全権を委任したが、李代表は現行制度の維持を選んだのだ。準連動型をうんぬんする言葉を、韓国国民の大部分は理解できなかっただろう。こんな乱数表のような制度を国民の前に突き出しておいて「きちんと知る必要はない」と言う。保守系与党「国民の力」は反発したが、民主党が押し付けてきたら、防ぐ方法はない。今回の総選挙でも、与野党双方が衛星政党を作り、記号の前に番号をもらうため「議員の貸し借り」をやるなど小細工の大騒動が起きるだろう。

 衛星政党が作られたら、民主党が出した候補なのに民主党所属ではなくなる。これは、韓国国民に対して公に詐欺を働くのと変わらない。李代表がこんな選択をしたのは、咸世雄(ハム・セウン)、李富栄(イ・ブヨン)など野党側の大物や正義党・基本所得党など群小政党が声をそろえて「汎野圏比例衛星政党」を要求したからだ。それをやってこそ、この面々は幾つかの議席を拾い上げることができるのだ。李代表が4日に対面した文在寅(ムン・ジェイン)前大統領も、同じ注文をしたという。李代表は、民主党外の野党一般に幾つか国会の議席をくれてやる代価として、大統領選挙時の自分に対する支持を買ったのと変わらない。

 こんな状況をつくった全ての責任は、民主党にある。今の継ぎはぎ選挙法を生んだのも、4年たっても改められずにまた同じ選挙をしなければならなくしたのも、こうしたプロセスを李代表ただ一人が決めるようにしたのも、全て民主党だ。民主党は4年前、曺国(チチョ・グク)元法相一家の事件をはじめ蔚山市長選挙介入事件など、文在寅政権の不正疑惑が一つ、二つと発覚するや、検察権を弱体化するため高位公職者犯罪捜査処を作ろうとした。これが思い通りにいかないので、正義党など群小政党を票決に引き入れねばならず、彼らの協調を得る代償として、まともな選挙法を書き換えて準連動型を導入した。その結果、21代国会は「最悪の国会」という評価を受けた。曺国・元法相の息子のインターン活動について虚偽の確認書を作ってやった崔康旭(チェ・ガンウク)元議員、慰安婦被害者の後援金を横領した容疑で裁判が続く尹美香(ユン・ミヒャン)議員、「清潭洞酒席」フェイクニュースをばらまいた金宜謙(キム・ウィギョム)議員などは全て民主党の衛星政党出身だ。

 韓国の与野党はいずれも、先の総選挙での衛星政党を反省し、二度と作らないと誓った。李代表も先の大統領選挙のとき、衛星政党を作らないと公約した。李代表は、この公約も破った。李代表は、平素は正義ぶったことを言っていても、いざ自分のこととなると変わる。不逮捕特権放棄を二度も約束したが、自分が拘束されそうになると発言を覆した。衛星政党についても、京畿道知事時代は反対していたが、党代表になると「また作りたい」と言う。4年前に李代表は「相手の衛星政党小細工に対応して同じ手を使ったら、国民の心を得ることはできない」と言っていた。この言葉は、今の自分に向けたものだった。

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