「夢の列車」と呼ばれる超高速「ハイパーループ」が次第に現実味を帯びてきている。これまでイーロン・マスクやバージングループのリチャード・ブランソン会長のような世界のIT富豪が未来の交通手段として着目し、開発に乗り出したものの、商用化は容易でなかった。しかし最近、世界各国がハイパーループの開発競争を繰り広げ、技術的障壁を一つ、また一つと突破している。中国が2月、ハイパーループ・リニアモーターカーで世界最速の新記録を打ち立てたのをはじめ、カナダでは乗客54人を乗せて時速1000キロで走る列車を開発中だ。テック(テクノロジー)業界では「ハイパーループにより、長い距離を飛行機よりも速く往来し交流できる新しい時代の幕開けが近づいている」とみている。

■真空により空気摩擦ゼロで走行

 ハイパーループは真空状態のチューブを超高速で運行できる列車だ。1910年、米国の物理学者ロバート・ゴダードが初めて提案したこの概念は、テスラの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスクが開発に乗り出し、注目を集めた。

 ハイパーループは、電磁石や超伝導磁石などを利用して列車を空中に浮かべて(磁気浮上)走行する。列車と線路が触れ合う摩擦部分が存在しない。また、真空状態のチューブの中を走行するため、空気抵抗も画期的に減らすことができ、天気の影響も受けない。列車の超高速運行が可能な理由だ。

 理論上、真空状態ではハイパーループの速度が時速1000キロを越える。これは旅客機(時速900キロ)よりも速い。このため、多くの研究陣はハイパーループを未来の交通手段と目し、商用化開発に取り組んできた。研究陣は、ハイパーループが通過する真空チューブを長く伸ばすことで、真空状態を維持することの難しさを経験した。小さな規模なら真空を維持することは容易だが、距離が長くなるほど困難となる。また、超高速で運行されるだけに、線路を直線で建設しなければならないといった限界があった。テック業界の関係者は「現在、世界各地で一部のリニアモーターカーが運行されているが、これらの列車は空気抵抗を受けて時速が400キロ程度に制限されている」と話す。

 ハイパーループの開発に乗り出したバージングループのリチャード・ブランソン会長は昨年12月、自身が運営していた「ハイパーループ・テクノロジー」の経営を断念したほか、地下にハイパーループを建設することで米サンフランシスコとロサンゼルスを30分で通勤できると主張したマスクもまだ明確な成果を出せずにいる。

■ソウル-釜山間をわずか20分で

 技術的限界にもかかわらず、世界各国の大学や企業は真空状態を維持する技術の研究に没頭したことで、最近少しずつ成果が見え始めている。中国航空宇宙科学工業グループ(CASIC)が開発したハイパーループ「T-フライト(Flight)」は最近、試験運行で時速623キロの新記録を打ち立てた。今回の試験は2キロを走行したもので、比較的短距離である。CASICは、次は60キロの距離を時速1000キロで走る実験を実施する予定だ。CASICの関係者は「究極的に超高速旅客機であるコンコルドに準ずる時速2000キロで走行させる計画」と話した。

 カナダのベンチャー企業であるトランスフォードも時速1000キロで走行する「フラックス・ジェット(FluxJet)」を現在開発中だ。乗客54人、または貨物10トンを積んでチューブの中をまるで飛行するかのように高速状態で走行する。磁石の押す力と引く力で空中に浮いたまま移動する。同社は2035年までに180億ドル(約2兆7000億円)を投じてカナダの主要都市のエドモントンとカルガリーを結ぶ300キロの路線を建設することを夢見ている。トランスフォードは「飛行機より40%も安く、二酸化炭素の排出量も63万6000トン減らすことができる」と説明している。

 ドイツのミュンヘン技術大学は直径4メートル、長さ24メートルのコンクリートチューブを開発し、目下試験中だ。これまで耐久性の高い鉄のような素材を使用していたが、相対的にコスト高が目立った。ドイツのミュンヘン技術大学は、大きな圧力差に耐えるコンクリートを利用することでコストダウンに成功すれば、ハイパーループ・インフラの拡張に役立つと見ている。韓国では、韓国建設技術研究院がコンクリート素材によるハイパーループ・チューブを開発中だ。

 テック業界は、ハイパーループが未来人類の生活を画期的に変えるものと期待している。時速1000キロでの走行が実現すれば、ソウルから釜山(直線距離で約320キロ)までわずか20分に短縮される。線路と列車間の摩擦が存在しないため、騒音も減る。韓国建設技術研究院のペク・チョンデ博士は「理論的に見れば、韓国では全国を30分以内に移動することができるほか、国境を接する国々では飛行機よりも速く数十分以内に移動できるようになる」とし「世界中の人々を素早く連結する未来の交通手段となる」と期待を寄せた。

柳智漢(ユ・ジハン)記者

ホーム TOP