▲SKハイニックスが京畿道竜仁市遠三面で建設計画を進める半導体クラスターの鳥瞰図/SKハイニックス提供

 半導体製造装置メーカーで世界1位の米AMATが京畿道烏山に建設を計画していた研究開発(R&D)センターが、韓国政府のずさんな対応で足踏みしている。2022年に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領訪米の成果として大きく宣伝された投資案件で、AMATはすでに土地を購入し基本的な設計も完了している。ところが韓国国土交通部(省に相当、以下同じ)が烏山市佳長洞とその周辺を公共宅地候補として発表し、その中に工場の敷地も含まれていたのだ。公共宅地に指定されればそれ以外の開発事業は禁じられ、R&Dセンターは建設できなくなる。

 AMATのR&Dセンターの敷地は世界最大規模の竜仁市半導体クラスターからわずか18キロしか離れていない。韓国の半導体生態系に加わるため投資を決めたグローバル企業を韓国政府が支援するどころか、逆に妨害するようなことがあってはならない。韓国政府は半導体産業を「国の戦略資産」と公言してきたが、その裏ではあり得ない状況になっていたのだ。

 SKハイニックスの竜仁半導体クラスター計画も敷地と工場用水確保の問題で3年にわたり建設が先送りされているが、今度は発電所問題というまた新たな障害が浮上した。SKはLNG(液化天然ガス)火力発電所を建設し半導体工場に電力を供給する計画だったが、韓国産業通商資源部が「カーボン・ニュートラル」を理由にブレーキをかけたのだ。太陽光や風力などの再生可能エネルギーでは半導体工場に必要な大量の電力はまかなえない。これでは企業もどうすることもできない。

 米国や日本は巨額の補助金を出して半導体工場を誘致している。台湾は国が先頭に立ち半導体工場に必要な電力や水の問題を解決している。ところが韓国ではサムスン電子の半導体工場が送電線問題で5年を無駄に費やすなど、あってはならない事態が何度も続いている。企業による投資額のわずか15%しか税の控除をしないケチな制度に加え、工場建設まで妨害しているようでは、「世界最大の半導体クラスター」など本当に建設できるのか。

 このように現場では行政が細かくケチをつけているが、その一方で尹大統領は今月9日の「半導体懸案点検会議」で「国の全ての力を結集し、半導体クラスターを成功させねばならない」として電力、水、住宅、交通などインフラ整備の現状を点検するよう指示した。大統領の指示と担当部処(省庁)の対応が全く連携が取れていないのが実情だ。

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