▲米軍と自衛隊統合幕僚監部の隊員、オーストラリア軍が、昨年2月の「キーン・エッジ2024」演習当時、米空軍横田基地で作戦を協議している様子。/写真=在日米軍

 米国と日本が昨年2月にシミュレーション形式で進めた「キーン・エッジ2024」合同軍事演習で、中国の台湾侵攻を想定したウォーゲームを実施していたと、4月6日に産経新聞が報じました。航空自衛隊所属の戦闘機が台湾海峡を渡ってくる中国の強襲上陸艦隊を対艦ミサイルで攻撃し、中国軍が日本列島西端の与那国島に上陸する等、実戦を想定した作戦指揮訓練を行ったといいます。

【写真】空母「山東」のスキージャンプ台を利用して発艦するJ15戦闘機

 米国と日本が中国の台湾侵攻に備えて合同軍事演習を進めるのは、これが初めてです。陸海空自衛隊を統合して指揮する統合作戦司令部が発足したという前提の下に演習が行われたといいます。台湾有事の際に在日米軍と自衛隊が合同で中国の攻撃を撃退する訓練を行ったのです。

 米国と日本は、来たる2027年に中国の台湾侵攻が行われる可能性に備えて、綿密に準備を進めている様子です。日本は遠距離から中国海軍の艦艇を攻撃できるトマホーク巡航ミサイルなどを米国から入手し、独自開発した極超音速ミサイルの配備も急いでいます。米軍も、早ければ4月中に海軍の最新鋭無人偵察機「MQ4Cトライトン」数機を沖縄の嘉手納基地に無期限配備し、中国軍の動向を監視する-と共同通信が伝えました。

■実戦を想定した連合作戦指揮演習

 産経新聞は、ウォーゲームの一部だけを紹介しました。中国軍は台湾侵攻を始めると同時に長崎県の佐世保基地や山口県の岩国基地へミサイル攻撃を行う、と想定しました。佐世保基地は米海軍第7艦隊所属の大型強襲揚陸艦が配備されている場所です。岩国基地は米海兵隊の航空基地がある場所です。中国が台湾に侵攻するとしたら真っ先に出動する在日米軍の主力部隊が、これらの基地に駐屯しています。

 米軍はすぐさま日本の統合作戦司令部に、台湾海峡を渡る中国軍強襲上陸艦隊への攻撃を要請したとのこと。自衛隊統合作戦司令部は今年3月に発足した組織ですが、昨年2月の演習では、この司令部がすでに発足しているとみなして図上演習を行ったといいます。

 日本は米国の要請を受け入れて航空自衛隊の戦闘機を出撃させ、中国軍の上陸艦隊の輸送艦を攻撃しました。航空自衛隊が保有するF35AとF15Jなどが出撃し、対艦ミサイルを浴びせたのです。航空自衛隊は、独自開発した空対艦ミサイルASM2とASM3などを持っており、ノルウェーのコンスベルグ社から導入した空対艦巡航ミサイルJSM(Joint Strike Missile)なども運用します。

■「中国の空母は脅威的ではない」…攻撃対象としての優先順位は下

 演習当時、自衛隊内部では「上陸艦隊より中国の空母をまず攻撃すべきではないか」という意見が出たそうです。しかし討論の末、その時点で中国軍が運用している空母は攻撃対象として優先順位は低い、という判断を下したといいます。中国の空母はそれほど脅威ではない、というんですね。謎の1敗を喫したわけです。

 琉球諸島最西端の与那国島に中国軍が上陸した、という状況も想定したとのことです。この島は台湾から東にわずか110キロしか離れていません。陸上自衛隊は、九州に駐屯する部隊を増援として派遣し、対応したそうです。この過程で、陸自の部隊を運ぶ輸送機と中国艦艇の攻撃のために出動する戦闘機のどちらが基地滑走路の優先使用権を持つのかを巡る論争が起きたといいます。

 産経が作ったグラフィックを見ると、北海道と東北にいる陸上自衛隊の「機動戦闘車」部隊も岩国基地へ移動することになっています。産経新聞は、このウォーゲームの結果は台湾有事の際に在日米軍と自衛隊の行動指針となる作戦計画にも反映されるだろう、との見方を示しました。

 自衛隊は集団的自衛権の観点から台湾防衛のための作戦を行った、と産経新聞は報じました。日本に対する組織的かつ計画的な武力攻撃とはみなせず、個別的自衛権を行使することはできないが、日本の存立を脅かす「存立危機事態」としては認定できるので、集団的自衛権の行使という次元で武力攻撃を行う-というものです。

■「存立危機事態、集団的自衛権の次元で対応」

 昨年2月の演習当時も、共同通信などは「米軍と自衛隊が中国を仮想敵国として明示して台湾有事に備えた演習を行った」と報じました。中国国営の「環球時報」などが「中国を仮想敵国とするこのような演習は台湾海峡を巡る緊張をあおるだけだ」と反発しました。しかし日本の防衛省と自衛隊は、当時「特定の国や地域を狙った演習ではない」と公式に否定していました。

 ところが、およそ1年が経過して、日本メディアを通して台湾有事に備えた演習を行ったという事実を電撃公開したのです。中国が台湾に侵攻したら米国と日本の連合軍が直ちに対応するだろう、という意志を露わにすることで、侵攻を抑止しようとする狙いだとみられます。

 日本は2022年に安保3文書を改訂し、自衛隊が敵の攻撃原点に対する反撃能力を保有できるようにしました。昨年5月には陸海空自衛隊を統合して指揮する統合作戦司令部の設置を定める法案が国会を通過しました。また、米国から海上発射型トマホーク巡航ミサイル、長距離空対地巡航ミサイル(JASSM-ER)などを購入しています。独自の極超音速ミサイルも開発し、来年から実戦配備に入ります。

崔有植(チェ・ユシク)記者

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