▲イラスト=金炫国(キム・ヒョングク) ▲イラスト=金炫国(キム・ヒョングク)

 北朝鮮がこのところ戦力形成に力を入れている無人機の場合、ウクライナ戦争で習得した現代戦の経験と合わさることで大きな脅威になるだろう、というのが韓国軍当局の懸念だ。北朝鮮は米国の無人攻撃機「リーパー」や、同じく米国製の無人偵察機「グローバルホーク」と外見が似ている無人機を運用している。5月17日には無人攻撃機の編隊飛行を初めて披露し、今年3月には光学カメラを搭載した改良型無人偵察機「セッピョル4」を公開した。ウクライナに派兵された北朝鮮軍は、無人機を利用した現代戦を習得したが、これらの無人機が今後、韓半島有事の際に北朝鮮軍通常戦力の主要な軸になるものとみられる。

【写真】北朝鮮が公開した新たな通常兵器

 とりわけ、米国製のものを模倣した無人機の外形は、有事の際に韓半島に投入される米軍無人機との彼我識別を難しくするためのものと分析されている。情報当局の関係者は「ウクライナ戦争の経験を『われわれ式で消化せよ』という金正恩の指示を反映して、北朝鮮は偵察自爆型無人機、早期警戒機の開発や防空戦力の拡充にもまい進する様相を見せている」と語った。

 北朝鮮は昨年11月に新型戦車「天馬」も公開した。アクティブ防護システムや遠隔射撃統制システム、対ドローン防御システムなどを適用していると推定されるが、対する韓国軍の主力戦車K2の場合、こうしたシステムは備えていない。アクティブ防護システムとは、戦車などに対するミサイル・ロケット弾の脅威が装甲に到達する前に感知・迎撃するシステムだ。韓国軍関係者は「K2戦車の場合、アクティブ防護システムを開発中」と語った。

 陸海空軍全ての分野で韓国軍よりぜい弱と評価されていた北朝鮮の通常戦力が、全体的に向上しつつあるのだ。韓国国防安保フォーラムのオム・ヒョシク事務総長は「かつては北朝鮮が非対称戦力の核を中心に武器システムを発展させた。通常戦力において韓国とは相手にならないので、非対称戦力で体制保全をもくろんだと評されていた」「だが北朝鮮は今や、通常戦力でも南側に引けを取らず、時には圧倒するということを公に見せる姿勢へと変わった」と語った。一部からは、北朝鮮の通常兵器の能力向上で局地挑発の可能性が高まったという分析も出ている。現在北朝鮮が優位を占めている核・ミサイルは戦略兵器なので、簡単には使えないが、通常兵器なら全面戦ではない局地挑発をすることができるのだ。

 ただし、金正恩総書記が推進している通常兵器の現代化にどれくらいかかるのかを巡っては、意見が分かれている。韓国軍のある元将官は「韓国軍の場合、全ての兵器を国産化する必要はなく、米国など友邦から輸入するケースが多く、まだ通常兵器の優位はあると見ることができる」としつつ「だが金正恩の指示に伴って北朝鮮の急激な通常戦力現代化が進むのであれば、2-3年以内に幾つかの分野での脅威も考えてみるべきかもしれない」と語った。反面、峨山政策研究院の車斗鉉(チャ・ドゥヒョン)副院長は「朝ロ密着がしばらく続くとしても、北朝鮮が韓国と互角に通常戦力の均衡を保とうと思ったら5年から10年はかかると推定される」と語った。

 北朝鮮の経済力を考慮すると、通常兵器の現代化戦略は北朝鮮の経済全体に悪影響を及ぼすだろう、という分析もある。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「北朝鮮が非対称の兵器として核・ミサイル開発に乗り出したのは、通常戦力の軍隊開発を諦め、その資金を経済開発に使おうという趣旨だった」とし「核・ミサイルに通常戦力の拡大まで加えたら、北朝鮮の経済全体が耐えられない水準になるだろう」と語った。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者、ヤン・ジホ記者

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