韓国軍
「平壌への無人機潜入作戦、昨年10月に韓国軍ドローン司令部が実施」「合同参謀本部にも報告済み」【独自】
ドローン作戦司令部(ドローン司)の中心的関係者が8日、「昨年10月に北朝鮮の平壌へ無人機を潜入させる作戦があり、関連の作戦内容は合同参謀本部(合参)に何度か報告が行われた」と語った。この関係者は弁護人を通して、本紙に「当時の作戦計画および作戦結果は合参の作戦本部と国防部(省に相当)に何度か報告された」「全ての作戦は規定と手続きを守って行われた正常な作戦」と語った。その上で「一部で、国家安保室が直接ドローン司に指示したのではないかと疑惑を提起しているが、そういう指示はなかった」と述べた。国防部と合参はこれまで、無人機潜入を行ったかどうかについて肯定も否定もしない「NCND」の立場を取ってきた。そうした中、無人機潜入作戦に直接関わった人物が作戦の実体を認めたのは初めてだ。ドローン作戦司令部は、敵の無人機などに対応するため2023年に発足した陸・海・空軍および海兵隊の合同戦闘部隊だ。国軍組織法により、合参議長の指揮・監督を受ける。
【写真】平壌への無人機潜入作戦に投入されたとみられる韓国軍無人機
平壌無人機潜入疑惑は、北朝鮮が昨年10月、「大韓民国の無人機が平壌上空に侵入し、対北ビラを散布した」と主張したことに伴って浮上した。当時、北朝鮮は韓国軍の無人機の残骸を発見したとして、関連の写真も公開した。これに関連して、進歩(革新)系の「共に民主党」などでは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が12・3非常戒厳宣布の名目にするため、北朝鮮の挑発を誘導しようと無人機を平壌に侵入させた―として外患疑惑を提起してきた。しかし、22年に起きた北朝鮮軍のソウル上空無人機侵入や24年の汚物風船に対応した対北作戦だというのが、韓国軍関係者の立場だ。
平壌無人機潜入作戦が行われた昨年10月は、南北関係が緊張の局面へと向かっていた時期だ。北朝鮮は22年12月に5機の無人機で韓国首都圏一帯の領空を侵犯した。そのうち1機は大統領室があるソウル市竜山区一帯の飛行禁止区域内に入り込み、国家元首警護防空網が突破された、という指摘もあった。24年5月から11月にかけては、北朝鮮が数千基の汚物風船を韓国に飛ばし、緊張が高まった。
昨年6月、当時の尹大統領は顕忠日の記念演説で、汚物風船挑発を念頭に置いて「政府は北朝鮮の脅しを決して座視しないだろう」と述べた。だが合参指揮部は、対応作戦に関して慎重な姿勢を維持した。南北の緊張が衝突につながることを防ごうと、状況管理に力を入れた。すると民主党などからも、汚物風船の自由落下を待つという軍の対応は微温的だとして、休戦ライン上空で風船を撃墜すべきではないかという主張が出た。
こうした中、昨年10月に、当時の金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防長官は「北朝鮮は限界線を越えている。さまざまな対応を準備中」と述べた。こうした状況でドローン司の平壌無人機潜入作戦が進められたのだ。これに関連して金明秀(キム・ミョンス)合参議長は今年1月、国会の国政調査で、無人機作戦について「確認はできない」としつつも、北の挑発を誘導しようとしたとの外患疑惑については「そのように準備したり計画したり、そういう状況を持っていることは絶対にない」と断言した。
特別検察官は、ドローン司に無人機潜入作戦を指示した最終決定権者が誰なのか捜査するだろうと考えられている。韓国軍内外では「金竜顕長官→金明秀合参議長→イ・スンオ合参作戦本部長」を経てドローン司に指示が下った可能性と、金長官が合参議長と作戦本部長を飛び越えてドローン司に直接指示を下した可能性を巡って、食い違った証言が出ている。
韓国軍関係者は「対北無人機潜入作戦を一線の司令部が単独で実行することはできない」とし「ドローン司が合参や国防部へ事前に報告するなど、作戦計画の段階からコミュニケーションを取っていたと思う」と語った。逆に、別の韓国軍消息筋は「無人機潜入作戦の指示は金・前長官が直接ドローン司に下し、イ・スンオ作戦本部長はドローン司の作戦結果を事後に報告されたと理解している」と語った。特別検察官は一部の合参関係者を取り調べたが、これらの関係者も「ドローン潜入計画の樹立段階では作戦を知らなかった」と供述したと伝えられている。なお、金・前長官側は「追って立場を明らかにしたい」と述べ、イ本部長は本紙の問い合わせに回答しなかった。
兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者、オ・ユジン記者