社会総合
カンボジアが韓国人犯罪者逃亡先1位になった二つの理由【独自】
東南アジアの主な観光地であるカンボジアが韓国の犯罪者による「海外逃避先」としてトップに浮上したことが分かった。本紙が入手した韓国警察庁の資料によると、今年1~5月だけで102人の韓国人が国内で犯罪を犯した後、カンボジアに逃亡したか、カンボジアでの犯罪で通報された。これまで上位だった中国(89人)、ベトナム(70人)をはるかに上回る人数だ。
【グラフィック】カンボジアに逃亡した韓国の犯罪者数
カンボジアの現地犯罪組織に取り込まれ、被害を受ける韓国人も急増している。金健(キム・ゴン)国会議員(国民の力)が韓国外交部から提供を受けた資料によると、カンボジアで拉致・監禁された韓国国民の数は2023年の21人から昨年の221人へと1年で10倍以上に増えた。現地韓国大使館の領事コールセンターが受理した拉致・監禁関連の届出も同じ期間に40件から586件に増えた。カンボジア現地では「犯罪者はもちろん、犯罪被害者も一緒に増え、韓国人による新たな『犯罪の巣窟』になっている」との指摘が広がっている。
カンボジアが韓国国民を対象にしたボイスフィッシング、不動産開発詐欺、国際ロマンス詐欺などあらゆる犯罪の中心地に浮上したのは比較的最近のことだ。2023年12月、高齢者を相手にカンボジアへの不動産投資を勧誘し、923億ウォン(約98億円)を詐取した主犯の一人であるH容疑者(50)がカンボジアで検挙された。彼らは首都プノンペン一帯の開発事業に投資すれば、大きな収益を上げられると持ちかける手口を用い、被害者は主に60、70代の高齢者だった。
2023年6月にはプノンペンを観光中にインターネットでライブ配信をしていた韓国人男性を殺害した30代の中国人夫婦が検挙された。カンボジア検察は、被害者男性を拷問した後、殺害した容疑で中国人夫婦を起訴した。
韓国国内や他国で犯罪に及んだ後、捜査を避け、カンボジアに逃亡するケースも増えている。代表例が昨年5月、タイ・パタヤで起きたいわゆる「ドラム缶殺人事件」だ。タイに住んでいた韓国人3人は観光客の男性を拉致して金銭を奪い殺害した後、あらかじめ準備していたドラム缶に遺体とセメントを入れ、近くの貯水池に捨てた。事件の主犯L容疑者(28)は事件直後にカンボジアに逃走し、現地で逮捕された。サンバンウル対北朝鮮不正送金事件などに対する検察の捜査を避け、3年にわたって海外逃亡しているKHグループ会長、ペ・サンユン容疑者(58)も最近、メディアのインタビューに対し、フィリピン、ベトナムなどを経由し、現在はカンボジアに潜伏中だと明らかにした。
詐欺や拉致、殺害など凶悪犯罪を日常的に行う国際組織は、これまで中国、ラオス、ミャンマーなどが主な本拠地だった。しかし、これらの国々で取り締まりが厳しくなると、相対的に取り締まりが緩いカンボジアに押し寄せている。長期独裁体制、警察人材の不足などが複合的に作用し、「カンボジアは犯罪に寛大な国」という認識が全世界に広がっている。
フン・セン元カンボジア首相は1997年にクーデターで政権を握った後、「絶対権力」を享受してきた。2023年に首相職を退いたが、息子のフン・マネット現首相が後を継いだ。現地在住韓国人の間では、韓国から来た犯罪組織がカンボジアの独裁政権と緊密に接触し、逃亡犯罪者の面倒を見ているという話も聞かれる。
現地に派遣された韓国の警察人材の不足も韓国の犯罪者を引き寄せる要因となっている。カンボジアには「コリアンデスク」(韓国人犯罪担当警察官)がいない。派遣警察官2人が大使館に勤務しているが、リアルタイムで犯罪に対応するのは非常に困難だ。現地在住韓国人は「カンボジア警察は通報後、出動まで早ければ半日、遅ければ3日以上かかる場合がほとんどだ」と話した。
ここ1~2年は中国系犯罪組織も現地で過激化し、彼らに拉致・監禁される韓国人も急増している。「特別なスキルがなくてもカネを稼ぐことができる」という求人広告を見てカンボジアに向かって監禁され、ボイスフィッシング組織の一員として電話をかけさせられるなど犯罪に巻き込まれている。一部は拷問まで受けているほか、中国人が作成したボイスフィッシングの台本を韓国語に翻訳しているところを救出されるケースもあった。人権団体アムネスティ・インターナショナルは先月末に発表した報告書を通じ、カンボジア全土で53カ所の『詐欺拠点』が確認されたとし、「全世界を対象に犯罪を行っているが、カンボジア政府はそれを放置している」と指摘した。
カンボジア現地の犯罪被害が急増し、韓国警察は対策に乗り出した。韓国警察庁は最近、カンボジア警察の捜査官を韓国に招き、サイバー捜査研修を実施している。また、来年から2030年まで1350万ドル(約19億5000万円)を投資し、カンボジア警察の科学捜査レベルを向上させる支援事業も実施する予定だ。一連の支援を通じ、現地警察に相互協力の強化を求める計画だ。
イ・ギウ記者