社説
一審判決に10年かかった正義党代表の警察官暴行事件裁判、これは正義なのか【10月10日付社説】
正義党の権英国(クォン・ヨングク)代表は2015年にソウル都心の集会で警察官を暴行したとして、先月9日の一審で懲役6月、執行猶予1年の判決が言い渡された。当時権代表は道路を占拠し、警察の解散命令に従わず警察官の頭を手で殴った疑いがある。検察は公務執行妨害と集会および示威に関する法律(集示法)違反の容疑で2018年に権代表を起訴したが、それから7年、暴行事件からなんと10年が過ぎてやっと一審の判決が下されたのだ。
【写真】正義党・権英国代表
権代表は民弁(民主社会のための弁護士会)や民主労総(全国民主労働組合総連盟)で弁護士として活動してきた人物だ。2015年に不法デモ容疑で権代表の拘束令状が請求された際、民弁所属弁護士50人以上が弁護団を結成した。弱者を代弁するはずの人権弁護士が庶民には想像もできない法的な支援を受けたのだ。権代表は2014年の統合進歩党解散宣告の際にも法廷で騒ぎを起こした容疑で起訴されたが、それも2022年にやっと罰金500万ウォン(現在のレートで約54万円)の判決が確定した。なぜ権代表に限って裁判の遅延が繰り返されるのか全くもって理解できない。
権代表の弁護団は「検察が事件を引き延ばした」と主張しているが、検察は「被告は公安事件で使われるあらゆる裁判遅延の手口を総動員した」と反論している。権代表が証拠のほとんどを否定し、証人尋問にも時間がかかり、映像鑑定も何度も行うことで審理を引き延ばしたからだ。刑事訴訟法上、被告の権利は最大限尊重されねばならないが、過度な防御権行使で裁判が常識外れと言えるほど遅延したとすれば、これは司法の正義が守られたとは言えない。一般市民が警察官を暴行した場合に裁判は10年もかかるだろうか。
とりわけスパイ容疑などの公安事件では被告が違憲審判申請、裁判官忌避申請などあらゆる法的手段を使って裁判を遅延させ、裁判所もこれを積極的に防ごうとしない事例が増えつつある。国の安全に脅威となるスパイ容疑者が裁判中に釈放され、通りを堂々と歩き回る事態が起こっているのだ。司法改革は大法院長(最高裁判所長官に相当)の強迫や侮辱などの見せかけではなく、裁判の非常識な遅延を正すなど常識を回復することから始めねばならない。