▲グラフィック=朝鮮デザインラボ イ・ミンギョン

 最近カンボジアで韓国人の就職詐欺・監禁被害事例が急増している中、韓国サッカー界の有名指導者で、ベトナム代表監督も務めた朴恒緒(パク・ハンソ)氏が「拉致の危機に直面した」と語っていたことがあらためて注目されている。

【写真】「カンボジア旅行帰りに拉致されそうになった」と発言する朴恒緒・元監督

 朴恒緒・元監督は昨年3月に放送されたSBSのバラエティー番組『DOLLSING FOURMEN(ドルシン・フォーメン)』で「妻と一緒に拉致されそうになったことがある」と告白した。

 朴恒緒・元監督は「ベトナム独立記念日に3泊4日の休暇を取って妻とカンボジアに旅行に行ってきた。ベトナムの空港に到着したのは夜11時だった。タクシーがなくて辺りを見回していたら、若者が手を振りながら近づいてきた。ところが、その車に乗ったら、音楽からして変だった。若者はしきりに私の財布を見ていた。『韓国のお金とベトナムのお金を変えよう』と言われて、おかしいと思った」と語った。

 さらに、「私は家までの道を知っている。だが、突然右側の山道に入った。『なぜこの道に入るのか』と聞いたら、『オフィスに行く』と答えた。『止めろ』と言っても、舗装されていない道路を走り続けた」と、危険な当時の状況を説明した。そうするうちに車は空き地で止まった。朴恒緒・元監督は「連れてこられたと思った。とりあえず妻に『落ち着こう』と言った」と語った。

 そこでは10人ほどが座ってお茶を飲んでいた。朴恒緒・元監督は、その中に自分のことを知っている人物がいるかもしれないと思って、車から降りたという。「誰かが『ミスター・パク? パク・ハンソ?』と言った。全てを聞き取ることはできなかったが、『早く帰らせろ』と言っているようだった。リーダーのような人物が来て、私と妻を車に乗せて帰らせてくれた。今では笑いながら話すことができるが、当時は本当に戸惑った」と言って、胸をなでおろした。

 東南アジア諸国で韓国人を狙った犯罪が最近相次いでいることから、この経験談が再び注目されている。韓国外交部(省に相当)などによると、カンボジア内の韓国人拉致通報件数は2022-23年の年間10-20件前後から、昨年は220件、今年は1月から8月までで330件へと大幅に増えているという。

 今年8月には「カンボジアの博覧会に行ってくる」と言って家を出た20代の韓国人大学生が遺体で発見された。カンボジアの現地警察は死因を「心臓まひ(拷問による激痛)」だと指摘した。先月もカンボジアのプノンペンで50代の韓国人男性が街で拉致・拷問される事件が発生した。

 韓国外交部は10日午後9時からカンボジアの首都プノンペンに対する旅行警報を「特別旅行注意報」に引き上げた。同部は「カンボジア内の特別旅行注意報発令地域に訪問する計画がある韓国国民は、緊急の用事でない限り訪問を中止・延期してほしい。同地域に滞在中の韓国国民は身辺の安全に特に留意してほしい」としている。

 また、趙顕(チョ・ヒョン)外交長官は同日、駐韓カンボジア大使を呼び出し、対策を立てるよう強く求めた。趙顕長官は「韓国国民が死亡するなどの事態が再発しないよう、安全確保のために積極的に努力してほしい」と要請した。通常、局長クラスが行う呼び出しを外交長官がしたのは異例のことだ。

イ・ガヨン記者

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