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 昨年4月、韓国最大のエンターテインメント企業HYBEが人気ガールズグループNewJeansを専門に担当する傘下レーベル「ADOR」のミン・ヒジン元代表に対する監査に着手し、いわゆる「NewJeans問題」が起きた。当時HYBE側はミン元代表がNewJeansを引き連れて違法な事業独立を試み、経営権奪取を図ろうとした疑惑を指摘し、ミン元代表は「あきれたメディアプレー」だと反論した。

【写真】「青い珊瑚礁」を熱唱するNewJeansハニ

 対立の過程でミン元代表は代表職を解任され、NewJeansのメンバーは自分たちが求める「ミン・ヒジン氏復帰」がなければと専属契約を解除すると宣言した。

 結局、ADORはNewJeansを相手取り、「専属契約有効確認訴訟」を起こし、10月30日に一審は「専属契約を維持すべきだ」として原告勝訴の判決を下した。裁判所は「ミン元代表がNewJeansをHYBEから独立させるために事前にメディア工作や訴訟などを準備した。ADORとHYBEがミン元代表に対して不当な監査を実施したとは見なせない」と判断した。裁判ではミン元代表が側近と交わしたメッセンジャーアプリ「カカオトーク」の通信記録などが主な根拠となった。

■「HYBEを苦しめ、自分たちは自由を得る」

 朝鮮ドットコムが入手した判決文によると、NewJeansのメンバーは「2024年3月末からミン元代表に(別のガールズグループ)ILLITによるコピー問題の解決を求める電子メールを送り、それを受け、ミン元代表が同年4月3日と16日、HYBE側に不当行為の是正を求める電子メールを送った。HYBEがNewJeansのカムバックを5日後に控えた時期にミン元代表に対する報復的な監査を始め、ADORの理事(取締役)を入れ替えた」などと主張した。

 しかし、裁判所はミン元代表が側近と交わしたカカオトークの通信記録などを根拠に、そうした主張を認めなかった。判決文によれば、ミン元代表の側近A氏は昨年2月からカカオトークのチャットルームで「あちら(HYBE)を苦しめ、自分たちは自由を得る。それが私の原告企業(ADOR)での計画だ」と述べ、それに対し、ミン元代表は「そうなればよい」と応じていた。

 ミン元代表は同年3月29日に側近らに「計画変更、(時期を)早める、4月3日に第1弾を送り、(中略) 我々は世論戦の準備」というメッセージを送った。HYBEとの紛争を繰り上げるという趣旨だ。さらに4月8日には「NewJeansに対する業務妨害、営業妨害という方向に進まなければならないと昨日グループチャットで何度も言ったではないか。私が思うには、重要事案でいくつか(訴訟を)仕掛け、あとは世論戦で」と指針を示した。裁判所は「ミン元代表はHYBEがNewJeansの活動を妨害したという点を際立たせる方向で世論戦に備えながら、訴訟も準備した」と判断した。

■ミン元代表、NewJeansのメンバーの親を活用

 裁判所はまた「ミン元代表が(紛争の)過程で前面に出ず、NewJeansのメンバーの親を立てて、自然にHYBEがNewJeansを不当に扱ったという世論をつくろうと計画した」と指摘した。

 その証拠として、ミン元代表が同年4月16日、側近に送ったメッセージの内容を挙げた。ミン元代表は「今度は(NewJeansメンバーの)母親が直接(HYBEに)メールを送るのはどうか」「世論戦に突入する準備をすべきだ。親たちとHYBEが直接やりとりする間に何か攻撃材料が生まれるかもしれない」と書いている。また、HYBEに送った電子メールの内容をカカオトークのチャットルームで共有し、「母親らはそれぞれが返信を送り、『(HYBE側とは直接)会いたくない』と答えるのがよさそうだ」と話した。裁判所は「(ミン元代表が)HYBEとの紛争について、NewJeansメンバーの母親らをどう活用するかについて提案した」と結論づけた。

 ミン元代表は、NewJeansのメンバーの父親が直接抗議しているようなメールの作成も指示した。 ミン元代表は「別人による文体に変えてみてはどうか。男性の文体に変えてもよいし、怒鳴りつけてもよいし、ちょっと年寄り臭くしてもよい。女性らしくない文体で」などと述べている。

■ミン元代表、HYBE所属歌手に言及「決定的な物証探せ」

 ミン元代表は今年4月末、側近にHYBEを攻撃するための材料探しを指示し、特定アイドルグループに言及した。当時ミン元代表側は、HYBE所属の別の女性アイドルグループのアルバム押し売り疑惑に関連し、HYBEを公正取引委員会に申告する案を話し合ったが、意見がまとまらなかったもようだ。

 ミン元代表は側近A氏に「公取委でも商法違反でも背任でも何でも(攻撃材料を)探すよう言えばよい。証拠を見つけられるだけ探してみよう」「そういう決定的なことをもっと探してほしい。多ければ多いほどよい」と語り、アイドルグループの実名にも言及していた。

 裁判所は会話内容について、「ミン元代表の(指示の)目的はNewJeansをHYBEの不当な処遇から守ることとは無関係で、ADOR独立のためにHYBEの責任となるような証拠を探すためのものだった」と判断した。

■「兆ウォン単位の投資」模索も

 裁判所はミン元代表がNewJeansの独立に関する具体案の報告を受けていたことにも注目した。昨年3月、側近A氏はミン元代表に対し、「きょう個人的に親交のある知人との間で、どこが兆単位の投資をできるかについて話した」とし、「◯◯◯がKエンターテインメントに関心が高いそうだ」などと伝えた。そして、「会社を出て新しく体制を整えたり、脱退したりするのはとてももったいないと言っている。最も大切なのは奪われないという意志だ」とも述べた。

 これまでのK-POPアイドル関連の専属契約紛争は、まず歌手が所属事務所を提訴した後、契約の法的不当性を主張する方式だった。しかし、NewJeansの場合は、メンバーらが記者会見を開き、先に公に契約解除を宣言し、所属会社が訴訟を起こしたという点で異例だった。

 法曹界は今回の判決について、業界の慢性的な問題として指摘されてきた「タンパリング」(ライバル会社から人気アーティストを引き抜く行為)に対し、裁判所がブレーキをかけたと受け止めている。

 NewJeans側は「契約解除通知後、信頼関係が破綻したことを考慮すべきだ」と主張した。しかし、裁判所は「一方が相手方に専属契約上の義務不履行があったように見せかけ、解約通知を行い、紛争を悪化させたとすれば、解除通知後の事情を理由とする専属契約の解除可能性が高まり、当事者の一方が違約金など規定を避け、何の負担もなく専属契約から脱するといった結果が発生する」と指摘した。

 また「マネジメント契約の場合、当該芸能人が成功するかどうか不確実な状態で巨額の投資がなされ、成功を収めて初めて投資の成果を回収できるというのが一般的だ」とした上で、「当該芸能人が全面的な支援を受けて十分な認知度とファンを獲得後、会社経営に決定権を行使し、専属契約の効力を否定するならば、正当な理由なしに専属契約から容易に抜け出すことを認めることになる」とした。

 裁判後、ADORは「裁判結果がアーティストにとって今回の件をじっくり振り返る契機になることを願ってやまない」とし、NewJeansのメンバーの復帰を待つとの立場を明らかにした。一方、NewJeansのメンバー5️人の法律代理人である法務法人世宗は「既にADORとの信頼関係が破綻した現状で、ADORに復帰し正常な芸能活動を継続することは不可能だ」として控訴する意向を明らかにした。

イ・ガヨン記者

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