社会総合
麻薬物流基地と化した韓国…押収量は前年の3.6倍
今年1~8月に韓国の捜査当局に押収された麻薬の量が昨年と比べて3.6倍に増加したことが明らかになった。麻薬事犯が急増しているほか、中南米の麻薬犯罪組織が韓国の港湾やコンテナ船を麻薬流通の「積み替え拠点」として使おうとしているためだ。最近は韓国人が国際麻薬密売組織と共謀し、麻薬を海外に輸出して摘発されるなど、韓国国内の麻薬犯罪の規模が大きくなり、国際化する傾向を見せている。
韓国関税庁が徐千浩(ソ・チョンホ)国会議員(国民の力)に提出した資料によると、今年1~8月に韓国捜査当局に押収された麻薬は2810キログラムで昨年1年間の押収量(780キログラム)の3.6倍に達した。時価1兆1000億ウォン(約1160億円)相当で、9366万人が同時に投薬できる規模だ。韓国より麻薬産業が早く発達した日本と比べても麻薬押収量が多かった。今年上半期の韓国での麻薬押収量は2680キログラムで、日本は2070キログラムだった。
麻薬押収量が急増したのは韓国の港湾が国際麻薬組織の「物流基地」になっているためだ。米国・カナダの国境規制が強化され、北米での流通網が行き詰まった中南米の麻薬密売カルテルがアジアに目を向け、韓国の港湾を新たなルートにしているのだ。今年摘発された麻薬類のうち、貿易船やコンテナなどで韓国に到着し、当局に摘発されたケースは5件だったが、麻薬押収量全体の82%(2302キロ)を占めた。
今年4月、江原道江陵市の玉渓港では、メキシコを出港したノルウェー船籍の貨物船(3万トン級)の機関室の密室からコカイン1690キロが発見された。エクアドル、パナマ、中国などを経由し、韓国に寄港したところだった。韓国で摘発された麻薬事件としては、1件当たりの押収量が過去最多だった。わずか1カ月後の5月10日、釜山地検麻薬犯罪特別捜査チームと釜山税関は、釜山新港にエクアドルから入港した9万トン級貨物船のコンテナでコカイン600キロを摘発した。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の「世界麻薬報告書2025」は「アジア地域がコカインの終着地または中間移動経路として利用される例が増えている」と指摘した。
韓国の捜査当局は、主に米麻薬取締局(DEA)が提供する犯罪コンテナ船情報をもとに、麻薬密輸を摘発している。韓国の輸出入貨物の99%は港湾に入るので、そうした貨物を全数調査することは不可能であり、麻薬摘発には限界がある。そのため、米国側の情報提供が重要な取り締まりの手がかりになっている。国際麻薬組織の密輸手法も進化している。 船舶の隔壁や機関室のように接近が難しい地点に隠す例のほか、船員が直接麻薬を携帯して入港し、陸上の流通役に手渡すケースも増えている。韓国海洋警察幹部は「港湾密輸の取り締まりは米情報当局が提供する情報への依存度が高い。1件だけ取り締まりをかいくぐっても、韓国国内の年間摘発量に匹敵する量が流出、流入する恐れがある」と話した。
最近では世界2位の積み替え港である釜山港が麻薬組織の主な標的になっている。 昨年中南米全体の定期船による物流量のうち20~30%が釜山港を経由した。韓国関税庁関係者は「組織が痕跡を残さず安全に麻薬を運ぼうととして、定期大型コンテナ船などの運航インフラがよく整っている釜山港を狙っている」と指摘した。
韓国で麻薬を製造し、流通・輸出を試みる例も後を絶たない。昨年12月、仁川地検はコロンビア産液状コカインを建築用壁土に偽装して釜山港に密輸した後、江原道横城郡で固体コカイン61キログラムを製造し、流通させようとした組織を検挙した。今年9月、京畿南部警察庁は麻薬類の原料であるγ(ガンマ)ブチロラクトン(GBL)を大量に密輸した組織を逮捕した。この組織は国際麻薬組織のメンバーによる提案を受け、数百億ウォン相当のGBLを米国と豪州に密輸出したことが分かった。
ク・アモ記者、コ・ユチャン記者