北朝鮮総合
金正恩総書記、新たな戦略的軍事資産「北朝鮮版タウルス」初公開
北朝鮮が、長距離空対地ミサイルと推定される「北朝鮮版タウルス」などの新兵器を公開している。北朝鮮の朝鮮中央通信は11月30日、「金正恩(キム・ジョンウン)総書記が空軍創設80周年記念行事(11月28日開催)に出席した」と報じるとともに北朝鮮空軍の兵器システムを大挙公開した。金正恩総書記は同日の演説で「新たな戦略的軍事資産(アセット)と共に、新しい重大な任務が賦課されるだろう」とし「空軍が核戦争の抑制力行使において一翼を担当する」と主張した。
【写真】長距離空対地ミサイル「北朝鮮版タウルス」
北朝鮮メディアが30日に公開した写真を見ると、スホーイ25(Su25)戦闘機に長距離空対地ミサイルが搭載されている。北朝鮮が長距離空対地ミサイルを公開したのは今回が初めてだ。外形は、韓国空軍も運用しているドイツ製の長距離空対地ミサイル「タウルス(KEPD350)」に似ている、との評価もある。空中発射巡航ミサイルのタウルスは、精密誘導を受けて500キロ以上離れた目標を打撃する能力を備えている。
韓国軍は、タウルスで大田上空から平壌の中心施設を打撃できると主張してきた。北朝鮮も同様のミサイルで平壌上空から韓国首都圏および平沢・烏山一帯の在韓米軍基地などを打撃する能力を持ったのかもしれない―という懸念が出ている。
また北朝鮮は、空中発射した後、高速で滑空し、精密打撃が可能な滑空精密誘導弾をミグ29(MiG29)戦闘機に搭載した様子も公開した。その外形は米国のSDB2(GBU53)に似ている。北朝鮮が公開した写真の中には、MiG29にドイツのIRIS-Tに似た外見を有する、短距離空対空ミサイルとみられる新型空対空ミサイルが搭載されたものもあった。保守系野党「国民の力」の庾竜源(ユ・ヨンウォン)議員は、北朝鮮当局がドイツの防衛関連企業をハッキングしてIRIS-Tをコピー・開発した可能性を提起した。
北朝鮮は、今年5月に実射撃訓練に成功したという新型中距離空対空ミサイルも再度公開した。ロシアの輸送機を改造したと推定される空中早期警戒管制機、米国の最先端高高度無人偵察機「グローバルホーク」と外見がそっくりな「セッピョル4型」、米国の多目的無人機MQ9「リーパー」と似ている「セッピョル9型」なども姿を現した。
今回の兵器公開は、北朝鮮が韓国軍との格差の大きかった空軍戦力の現代化を強調したものと解釈されている。北朝鮮がタウルス級の兵器の独自開発に成功したことが確認されれば、通常兵器の開発・製造能力がかなりの水準に達したという評価を受けることもあり得る。空対空ミサイルおよびGPS(衛星利用測位システム)・光学誘導システム搭載爆弾は開発が難しい。韓国もタウルス級の長距離空対地ミサイルを独自開発しているが、2030年代にようやく戦力化できる見通しだ。
ただし、合同参謀本部の関係者は「現在までのところ、北朝鮮が長距離空対地ミサイルを試射した状況が韓米軍事当局に捕捉されたことはないと理解している」「開発進捗(しんちょく)の水準や実際の性能については追加の評価が必要」と語った。北朝鮮が長距離空対地ミサイル開発を完了したとしても、巡航ミサイルの特性上、防空システムのパトリオットや天弓IIなどで迎撃は可能と見込まれている。
なお、この日の行事には金正恩総書記の娘キム・ジュエ氏が黒いレザーコート姿で同席した。ジュエ氏は、今年9月に金総書記の訪中に同行した後、しばらく公の席に現れなかったが、およそ3カ月ぶりに公式な動きに出た。
ヤン・ジホ記者