▲イラスト=UTOIMAGE

 今月20日(現地時間)午後2時30分ごろ、米サンフランシスコのグローブ・ストリート周辺では道路の信号機が一斉に作動しなくなり、飲食店や商店の照明も消えた。都市で大規模停電が発生したのだ。近くの公演会場ではコンサートが中止になり、クリスマスを前ににぎわっていた街は車と人でさらにごった返した。信号は消えたが、車は通行人を避けながら秩序を守って動いた。しかし、ほどなくして市内の道路は混乱に陥った。その主犯は、グーグルが運営する自動運転の無人タクシー(ロボタクシー)「ウェイモ」だった。

【写真】交差点で非常灯を付けて停車している3台の無人タクシー

 ウェイモは、停電発生地域の交差点や道路の至る所で赤い非常灯をつけて止まり始めた。信号機のように従うべきルールがなくなった上、通信信号が弱まったため、安全な運転ができないと判断した運営者がタクシーのコールサービスを停止したからだ。海外メディアは「自動運転の車にいくら精巧なセンサーがついていても、結局は都市の電力網や通信網といった外部のインフラに大々的に依存しているという事実を如実に示した」と分析した。

■停電発生、そこら中で止まってしまったウェイモ

 この日の停電は、サンフランシスコの電力会社PG&Eの変電所火災が原因だった。CNBCなどによると、午後1時9分ごろ停電が始まり、市内全体の30%に当たる13万世帯(商業施設を含む)が影響を受けたという。電力の供給は徐々に再開されている。

 ウェイモは停電の間、事実上ずっと立ち往生していた。ウェイモは都市の精密な地図に基づいて訓練され、その通りに動いてレーダーやカメラなどのセンサーで信号機やリアルタイムの状況を認識する。もし人間の運転手であれば、停電や故障によって信号のランプが消えてしまっても、交差点で車の流れを見極めて臨機応変に動くことができる。しかし、信号機のランプを認識することができなくなったウェイモは、あらかじめ設計されたプログラムに基づいて「安全な運転が不可能」と判断し、自ら止まってしまったのだ。交差点や道路のど真ん中、路地裏など、至る所でそのまま止まってしまったため、交通妨害の主犯となった。SNS(交流サイト)でも「止まってしまったウェイモ」「車の間に挟まれたウェイモ」などさまざまな投稿が相次いだ。

■「自動運転の普遍化は時期尚早」

 今回の事態をきっかけに、自動運転を巡り「人間が介入しない自動運転車両の普遍化は時期尚早」という指摘が出ている。自動運転の技術自体は高度化してきているが、技術自体の限界に加え、都市のインフラ障害などによって発生する不測の事態が、都市全体をさらに大きな混乱に陥れる可能性があるからだ。今年初めに行われた米自動車協会(AAA)のアンケート調査によると、米国で運転しているという回答者の約3分の2が、自動運転車両に対して怖さを感じると答えた。

 また、交通システムなど都市のインフラが不十分で、無人の車が道路を自在に走行できる状態ではないとの指摘も出ている。道路工事のようなインフラの変化への対応に加え、停電のための補助電力網、常に遠隔制御が可能な通信網などを同時に整備する必要があるというわけだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)交通センターのブライアン・ライマー研究員はCNBCに対し「サンフランシスコでウェイモの運行が停止したのは、各都市が、高度に自動化された車が道路にあふれる事態にまだ対応できないということを示している」と述べた。

 無人タクシーが徐々に一般的になってきたことで、このような懸念はますます高まっている。サンフランシスコではウェイモだけでなく、テスラやアマゾンの子会社Zoox(ズークス)も無人タクシーに参入しており、「無人タクシー戦争」がぼっ発している。米国のIT専門メディア「テッククランチ」によると、ウェイモは米国全域で約2500台を運行中で、このうち約800台がサンフランシスコを含むシリコンバレーにある。Zooxとテスラも無人タクシーを商業化し、勢力を拡大している。特に最近では、ウェイモが市内だけでなく、制限速度が時速105キロの高速道路まで走行できるようになるなど、サービスエリアも広がっている。

シリコンバレー=カン・ダウン特派員

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