▲李仁星の1949年の作品「ダリア」(72.5×99センチ)。絵の下端に、出所の分からない「son」という黒い文字が見える。/写真=国立現代美術館
「これは何だ?」
最近、画家・李仁星(イ・インソン)=1912-50=の絵「ダリア」が韓国美術界でひそかな話題になっている。この絵は、今年4月に国立現代美術館へ寄贈されてソウル館で展示中の「李健煕コレクション」の一つだが、展示の最中、絵に出所の分からないおかしな署名が見つかったからだ。絵の下端の中央部には、李仁星の署名の代わりに、黒い絵の具で書いたアルファベットの「son」と推定される英文字が記..
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▲李仁星の1949年の作品「ダリア」(72.5×99センチ)。絵の下端に、出所の分からない「son」という黒い文字が見える。/写真=国立現代美術館
「これは何だ?」
最近、画家・李仁星(イ・インソン)=1912-50=の絵「ダリア」が韓国美術界でひそかな話題になっている。この絵は、今年4月に国立現代美術館へ寄贈されてソウル館で展示中の「李健煕コレクション」の一つだが、展示の最中、絵に出所の分からないおかしな署名が見つかったからだ。絵の下端の中央部には、李仁星の署名の代わりに、黒い絵の具で書いたアルファベットの「son」と推定される英文字が記されている。
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「ダリア」は、李仁星生誕100周年に当たる2012年にも国立現代美術館で展示されたことがあるが、「署名論争」が起きたのは今回が初めてだ。国立現代美術館側は、展示場を訪れた専門家らの指摘を受け、最近ようやくこの事実を把握した。美術館の関係者は「2012年当時、外部委員を招聘(しょうへい)して真偽問題を検証した」とし「李仁星の作品に間違いない」と語った。この絵は今年初めに韓国画廊協会の鑑定委員会でも「本物」と判定されたが、ある鑑定委員は「李仁星の絵でこんな署名は初めて見る」とし「権威者が本物だと認めはしたものの、後続の研究がぜひとも必要な絵画」と語った。
この絵は、韓国西洋画の端緒を作った画家の晩年作(1949)にふさわしく、豊かな色彩でダリアの花咲く広場を描写している。取材の過程で「1970年代末にロビイストの朴東宣(パク・トンソン)氏が購入した作品」だとか「絵の中のつぼなどのタッチが少しおかしい」「画家・孫一峰(ソン・イルボン)=1907-85=の署名と類似しているが、画風は全く異なる」など、さまざまな証言と分析が出たが、誰も署名(son)についてすっきりとする答えは出せなかった。李仁星は、英文署名の場合、フルネームを表記してきた。尹凡牟(ユン・ボムモ)館長もまた「画家の死後、知人らが絵画に署名の代わりに入れたという話を伝え聞いたことがある」としつつも、署名の出所と意味は説明できなかった。問題は、美術館側がこうした重大なミステリーを把握していたにもかかわらず、関連研究を進めるのではなく、対外的な騒ぎが起きるのではと内密にする雰囲気だったことだ。本紙の取材が始まると、美術館側は「研究を検討したい」とした。
韓国近現代の美術品がおおむねそうであるように、李仁星の絵も、真偽を巡る論争が多い方に属する。李仁星の故郷である大邱(大邱美術館)にも最近、「李健煕コレクション」に含まれる李仁星の絵が寄贈・展示され、この中にも物議を醸す問題作(『静物』)があった。この絵にも李仁星の署名はない。崔銀珠(チェ・ウンジュ)大邱美術館長は「“この絵は本物”という主張ばかりを繰り返すのではなく、予算を確保して学術的な研究と検証を進めたい」と語った。
チョン・サンヒョク記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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