▲イラスト=UTOIMAGE
「裁判はすなわち政治だ」と言う裁判官がいた。彼は「判事ごとに政治的性向があるという真実を受け入れて尊重しなければならない」と発言した。また「立派な裁判官でも政治嫌悪、無関心の中で安住するならば、非常に立派だとは言い難い」とも主張した。彼は2017年「判事ブラックリスト疑惑」が発生するや真相究明を要求し、10日間にわたって断食した。後で分かったことだが、国際人権法研究会の会員だった。
全国の裁判官..
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「裁判はすなわち政治だ」と言う裁判官がいた。彼は「判事ごとに政治的性向があるという真実を受け入れて尊重しなければならない」と発言した。また「立派な裁判官でも政治嫌悪、無関心の中で安住するならば、非常に立派だとは言い難い」とも主張した。彼は2017年「判事ブラックリスト疑惑」が発生するや真相究明を要求し、10日間にわたって断食した。後で分かったことだが、国際人権法研究会の会員だった。
全国の裁判官数は約3100人だ。このうち約400人が「国際人権法研究会」(人権法)の会員だ。裁判所内の大規模な学術団体の一つだ。国民の税金により予算支援も受けている。人権法は2011年に障害者や難民など国内外の社会的弱者の人権を保護する法について研究するとの目的で設立された。研究団体とはいえ、裁判所内の「政治結社体」と考える国民は少なくない。創立メンバー31人のうち10人がウリ法研究会(ウリ法)の出身だ。「ウリ法」の会長を務めたキム・ミョンス元最高裁判長が人権法の初代会長を務めた。これが、「人権法はウリ法の後身」といった言葉の出てくる理由だ。
しばらく忘れられていたウリ法と人権法が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の捜査と弾劾審判の過程で再び注目されている。尹大統領を逮捕した高位公職者犯罪捜査処(公捜処、政府部署の一つ)のオ・ドンウン処長は、人権法の出身だ。公捜処に逮捕令状を発行したソウル西部地裁のイ・スンヒョン部長判事は、ウリ法の出身だ。弾劾審判を引き受けた憲法裁は、ムン・ヒョンベ権限代行がウリ法の会長であり、イ・ミソン裁判官は人権法の出身である。チョン・ゲソン裁判官は、ウリ法と人権法の両団体で活動した。国会弾劾訴追団のパク・ポムゲ、チェ・ギサン議員もウリ法だ。弾劾審判の攻撃側と審判が同じ会の出身なのだ。これでは公正さを疑われざるを得ない。
憲法裁は「弾劾審判は憲法と法律を客観的に適用して行われるものであり、裁判官個人の性向に左右されない」とした。しかし、実際の裁判結果は違っている。イ・ジンスク放送通信委員長弾劾、「検察捜査権完全剥奪」権限争議などでは、裁判官らは普段メディアが分類した指向そのままに判決を下した。特にウリ法、人権法の出身は棄却であれ引用であれ、同じ意見を出したケースが実に72%に上り、政治的にデリケートな事件ではこの割合が90%にまで上昇するといった分析結果もある。最近では「蔚山選挙介入」事件の二審判決が論議を呼んだ。一審はソン・チョルホ前蔚山市長とファン・ウンハ議員に懲役3年を宣告したものの、人権法出身が主審を務めた二審では「有罪の疑いはあるが直接的な証拠がない」とし、全て無罪とされた。人々は最近、予想と異なる判決が下されると、「その判事はひょっとして人権法上がりか」と、まずは疑ってかかる。「裁判がすなわち政治」なら「判事はすなわち政治家」となる。三権分立が崩壊し、公正な裁判を受ける国民の権利がそれだけ侵害されることになる。
しかし、人権法の会員だからといって、全て野党に有利な判決だけを下すわけではない。民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表選挙法事件の一審で懲役刑を言い渡したハン・ソンジン部長判事も人権法の出身だ。秋美愛(チュ・ミエ)法務長官の懲戒決定を覆し、尹錫悦・当時検察総長に業務復帰の道を開いた判事も人権法出身のチョ・ミヨン判事だ。人権法裁判官らは「会員が400人を越えるため、スペクトラムが広い」という。ウリ法、人権法という理由だけで、判事たちに烙印を押してはならないということだ。
人権法裁判官の多くは、公正な判決を下すために日々努力していると信じている。ただし一部会員による「政治的判決」が目立ち、人権法全体が「司法不信」の代名詞となってしまった。一般会員は事実と異なる誤解に腹を立て、悔しい思いをするかもしれない。それならば、いっそのことこの機会に自主解散を宣言してみてはどうか。人権法が目標にしていた難民・障害者などに対する認識と処遇も徐々に改善されている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で似たような論議を経験したウリ法も自ら解散に踏み切った。人権法判事らの賢明な判断を期待する。
黄大振(ファン・デジン)社会部長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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