▲グラフィック=金炫国(キム・ヒョングク)
進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が、政権を取ったら軍の防諜(ぼうちょう)司令部(国軍防諜司令部)を事実上解体するレベルでばらばらにする案を進めるつもりでいることが16日に確認された。防諜司は先の12・3非常戒厳の際、政治家をはじめとする主要人物の逮捕の試みに介入した、という疑惑が持たれている。さらに民主党は、検察についても捜査権を完全に取り去って従来の検察を「公訴庁」に転換し、監査院は国会が..
続き読む
▲グラフィック=金炫国(キム・ヒョングク)
進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が、政権を取ったら軍の防諜(ぼうちょう)司令部(国軍防諜司令部)を事実上解体するレベルでばらばらにする案を進めるつもりでいることが16日に確認された。防諜司は先の12・3非常戒厳の際、政治家をはじめとする主要人物の逮捕の試みに介入した、という疑惑が持たれている。さらに民主党は、検察についても捜査権を完全に取り去って従来の検察を「公訴庁」に転換し、監査院は国会が統制できるように監査前に承認手続きを経るようにする案を進めている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で目に留まるほどの役割を果たした三つの権力機関を「内乱の本山」と見なし、つくり直そうというのだ。民主党内からは「積弊清算シーズン2のための下準備が始まった」という声が上がった。
【表】共に民主党の権力機関改革案
民主党国防安保特委は最近、防諜司の主要機能を三つに分割する案について検討を終えたことが分かった。民主党の大統領候補が確定したら、大統領選挙の公約にも含められるものとみられる。防諜司は、韓国軍の情報保安機能と監察、防諜などを専担する中心的な組織だ。民主党は、このうち情報保安機能は国防部(省に相当)傘下の情報本部の保安担当部署へ、監察機能は国防部監査官室へ、そして防諜機能も国防部調査本部に追加任務を与える形で移管したいというのだ。韓国軍関係者は「これでは防諜司令の解体も同然」と語った。民主党の李在明(イ・ジェミョン)大統領選予備候補の安保政策顧問を務め、国防特委にも所属している金度均(キム・ドギュン)元首都防衛司令官は、本紙の取材に対して「韓国で発生した戒厳状況の核心に防諜司がいる」として「これ以上戒厳の火種を残しておいてはならない。極端な措置が必要」と語った。
保守系与党「国民の力」からは「民主党が政権を取ったら『内乱終息』を口実にした大々的な政治報復がほしいままに行われるだろう」という声が上がった。
■スパイを捕まえる防諜司を3分割、検察は公訴庁に格下げ…「積弊清算シーズン2」
民主党は今月16日、祖国革新党などとの円卓会議で「内乱の完全な終息」を目標に掲げ、権力機関の改革を推進することとした。その中でまさに名前が挙がったのが防諜司、検察、監査院だ。政権交代時にはこの3機関が新・積弊清算の優先順位トップになるだろうと予告したわけだ。
民主党が推進している「防諜司解体」が実現したら、韓国軍の情報・防諜機能は事実上無力化されるものとみられる。機務司令部出身のある予備役将官は、電話取材で「保安と動向、監察、防諜機能が総体的に発揮されてこそ、きちんとした防諜ができるのに、分散させたら機能そのものを発揮できない」と批判した。
防諜司の前身である機務司令部は2018年、文在寅(ムン・ジェイン)政権によって軍事安保支援司に縮小された。軍事安保支援司が文在寅政権の5年間で検挙した国家保安法違反者は「0人」だった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の12人、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の45人、朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代の20人に比べ、急減した。
文在寅政権も、機務司を大幅に縮小はしたが、その機能を分散させることはなかった。ところが民主党が今回準備している案は、防諜司の機能をばらばらに散らしてしまうものであって、次元が違うとの評を受けている。
民主党は、検察に対しても捜査と起訴を分離するという大枠を事実上確定させ、細かな作業について話し合っているところだ。李在明候補は今月15日、ユーチューブの配信に出演して「捜査担当機関と公訴維持担当機関を分離し、捜査機関同士もけん制するようにすべき」と語った。民主党は、文在寅政権時代に検察の捜査権限をなくす、いわゆる「検捜完剝(検察捜査権完全剝奪)」を試みたが、検察の捜査権を完全に無くすことはできなかった。検察はもちろん、学界や市民団体の側も「むしろ犯罪の死角地帯が増えて市民の不利益も重くなる」と反発したからだ。ところが今では「あのとききちんと検察を解体できなかったせいで検察が内乱の同調者になった」と主張している。
民主党は、監査院に対しても「国会の統制下に置きたい」という立場だ。尹錫悦政権で監査院が行った特別監察は「政治監査」だと決め付け、特別監察をする際には国会の承認を得るようにする法改正を検討している。大統領が任命する監査委員も、推薦委を別に立ち上げて任命プロセスに社会各界の人物が参加するようにしたり、政府の政策についてはそもそも監査ができないようにしたりする案も出た。民主党指導部の関係者は「究極的には大統領直属の監査院を国会に移管するのが最も理想的」としつつ「これは改憲事項なので、まずは法改正で監査院の政治行為を防ぎたいということ」と語った。
民主党が推進している一連の改革作業が、文在寅政権の行った「積弊清算」を思い起こさせ、事実上「政治報復」にほかならない―という指摘がなされている。李在明候補は「公捜処を大幅に強化したい」と言っているが、検察の捜査・起訴権は切り離すのに捜査・起訴権を共に持っている公捜処はもっと強化したいというのはつじつまが合わない、という批判もある。民主党は、現在25人ほどの公捜処の検事を50人まで増やす計画だ。法曹界の関係者は「『言うことを聞かない剣』である検察は解体し、言うことをよく聞く公捜処という剣を振り回したい、ということではないか」と語った。
シン・ジイン記者、パク・サンギ記者、ヤン・ジホ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com