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今月17日に閉幕したカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議は、不安な中東情勢とウクライナ戦争の終戦問題が焦点でしたが、中国によるダンピング輸出と市場秩序かく乱を巡る問題も主要議題として取り上げられました。中国が巨額の補助金をバックにダンピング攻勢で世界の市場を乱し、レアアースなどの分野で他国を脅すことへの対応が必要だとの認識があるからです。議長国カナダのカーニー首相は「G7首脳は中国に市場歪曲(わ..
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今月17日に閉幕したカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議は、不安な中東情勢とウクライナ戦争の終戦問題が焦点でしたが、中国によるダンピング輸出と市場秩序かく乱を巡る問題も主要議題として取り上げられました。中国が巨額の補助金をバックにダンピング攻勢で世界の市場を乱し、レアアースなどの分野で他国を脅すことへの対応が必要だとの認識があるからです。議長国カナダのカーニー首相は「G7首脳は中国に市場歪曲(わいきょく)と供給過剰の自制を要求した」と述べました。
【写真】中国以外でレアアース確保…独占体制に一泡吹かせたオーストラリア企業
一時トランプ大統領の関税爆弾に対抗し、中国と共同戦線を組むことを模索していた欧州連合(EU)のムードは一変しました。フォンデアライエン欧州委員長は「2001年に中国を世界貿易機関(WTO)に加入させたことが問題の根源だ」という厳しい言葉まで発しました。ルールに基づく国際秩序を守る意思のない国をWTOに加盟させたことが問題だったという指摘です。トランプ大統領に対しては、「我々は互いで戦うのではなく、(中国という)共通の脅威に対応すべきだ」と求めました。
中国は強く反発しました。中国外務省の郭嘉昆副報道局長は18日の定例会見で、「G7首脳会議で示された主張は事実とは異なるもので、中国に対する偏見とダブルスタンダードに反対する」としたほか、「中国はWTOのルールを順守しており、補助金ではなく実力で競争力を高めてきた」と反論しました。
■「意図的な市場歪曲」VS「中国に対する偏見」
フォンデアライエン欧州委員長は17日、世界経済を巡る会合で意図したように中国を批判。「協力相手が互いに争うのではなく、私たちを脅かす実質的な挑戦に対応する方向にエネルギーを集中すべきだ。ドナルド、あなたは正しかった。本当に問題は深刻だ」と述べました。
フォンデアライエン欧州委員長は「中国は知的財産権に対する保護を弱体化させながら、巨額の補助金で全世界の製造業とサプライチェーンに対する支配力を高めてきた」とし、「これは市場競争ではなく意図的な市場歪曲だ」と語りました。また、「景気が低迷する中、政府による補助金で価格を下げた製品を過剰生産し、世界市場に送り込み、チャイナショックを起こした」と指摘。「こうした国家主導の成長による影響について、もっと責任感を持つよう中国に働きかけるべきだ」と指摘しました。中国が自国の経済危機を世界市場に転嫁しているとの考え方です。中国がアメリカの関税爆弾に対する報復としてレアアースの輸出規制に乗り出したことに関しては、「中国がほぼ独占しているレアアースを武器とし、主な産業ライバルに打撃を与えた」と述べました。
中国はトランプ大統領就任後に始まった関税戦争に対処するため、EUと共同戦線を模索してきました。フォンデアライエン欧州委員長も一時はそうした中国に呼応しました。
しかし、今年4月のレアアース輸出規制以降、EUは中国に完全に背を向けました。レアアース輸出規制は米国だけでなく、欧州の自動車産業にも大きな打撃を与えました。
■EU、中国の高官級対話提案も拒否
EUは4月末に中国製の高所作業設備に66.7%の相殺関税を課すことを決め、5月には中国製ハードウッド合板に最高62.4%の臨時反ダンピング関税を課しました。今月初めにはEU域内で行われる医療機器の公共入札から中国製品を排除しました。中国政府が自国の病院に中国企業の製品を優先的に購入するよう強制していることへの対抗措置だといいます。
英フィナンシャルタイムズが17日に報じたところによれば、中国は7月24、25の両日、北京で国交正常化50周年を記念する中国・EU首脳会談を行いますが、EUは事前に議題を調整するための高官級経済貿易対話を拒否したとされます。同紙は「中国は高官級対話を望んでいるが、EUはあらゆる分野で対話に進展がないことから、それを拒否した」と伝えました。
トランプ大統領の関税政策に批判的なニューヨークタイムズ(NYT)も17日、「中国のダンピング輸出が世界経済に再度チャイナショックを呼び起こす」と懸念しました。同紙は「中国経済の3分の1を占める不動産市場が崩壊し、景気低迷に陥ると、中国の政策当局は製造業者と輸出業者に資金をつぎ込み、それを挽回しようとしている。その過程で過剰生産された製品が世界市場にあふれている」と分析しました。
■NYT「中国発輸出ショック、全世界に拡散」
実際に年初来5月までの中国の自動車需要は昨年同期比で約11%増えるにとどまりましたが、電気自動車(EV)の生産台数は45%も増加しました。過剰生産で市場競争が激化すると、比亜迪(BYD)は5月、EV価格を最大34%引き下げ、価格戦争に突入し、世界市場に輸出しています。
中国は「中国製造2025」プロジェクトを通じ、半導体、EV、電池の輸出を大きく伸ばしましたが、過去に主力輸出品目だった雑貨類の輸出も増加傾向にあります。不動産バブルの崩壊で経済状況が厳しくなると、20年前に主力だった安価な雑貨類も世界に大量輸出しているのです。シンガポールの経済学者プリヤンカ・キショア氏はNYTの取材に対し、「中国は経済が成熟し発展すれば伝統的な低付加価値産業から脱却するという経済理論とは異なる道を歩んでいる。他国にとって大きな試練であり、圧迫要因だ」と述べました。
実際に中国製の低価格製品が押し寄せているインドネシアでは、紡織工場が大量に廃業し、タイの自動車部品産業は没落しています。NYTは「米国は中国に関税爆弾など保護貿易措置を取ることができるが、無力な国々はそれさえも容易ではない」と評しました。
崔有植(チェ・ユシク)記者
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版
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