▲イラスト=朝鮮デザインラボ・Midjourney
韓国全羅北道のある物流会社に勤める警備員Aさん(41)は昨年1月18日午前4時6分ごろ、会社2階の事務室の冷蔵庫からチョコパイ1個とカスタード菓子1個を取り出した。明け方にパトロールをしていたところ、お腹がすいたのでその菓子を持ち出して食べたという。この時点でAさんはそのことで裁判を受け、職場を失う危機に追い込まれるとは想像だにしなかった。
【写真】「15年前の高校時代に万引きした本の代金、受け取..
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▲イラスト=朝鮮デザインラボ・Midjourney
韓国全羅北道のある物流会社に勤める警備員Aさん(41)は昨年1月18日午前4時6分ごろ、会社2階の事務室の冷蔵庫からチョコパイ1個とカスタード菓子1個を取り出した。明け方にパトロールをしていたところ、お腹がすいたのでその菓子を持ち出して食べたという。この時点でAさんはそのことで裁判を受け、職場を失う危機に追い込まれるとは想像だにしなかった。
【写真】「15年前の高校時代に万引きした本の代金、受け取ってください」 100万ウォンを置いて消えた客
物流会社の所長は防犯カメラ映像を見て、Aさんを警察に通報した。Aさんは昨年2月6日、警察で取り調べを受けた。盗む意図は全くなかったと主張したが、警察はAさんが菓子を持ち出す姿が映った防犯カメラ映像を証拠として挙げた。警察は窃盗の疑いでAさんを送検した。
検察は窃盗金額が少ない点などから、Aさんを正式な裁判にはかけず、罰金50万ウォン(約5万3000円)で略式起訴した。しかし、Aさんは無罪を主張し、正式な裁判を請求した。Aさんは一審で「普段事務室を出入りする配送運転手から『冷蔵庫のおやつを食べてもよい』という話を聞いていた」とし、窃盗の故意がなかったと主張した。
しかし、会社側を代表して出廷した所長は「物流会社の従業員に食べてもらおうと、会社の法人用クレジットカードや私費で買っておいた菓子だった」とし、「配送運転手にも冷蔵庫をむやみに開けず、物流会社の従業員の許可を得てから菓子を取り出している」と反論した。
一審の全州地裁はA氏の主張を認めず、罰金5万ウォンを言い渡した。担当裁判長は「事務室は事務空間と配送運転手の待機空間が分離されており、冷蔵庫は配送運転手による出入りが許されない事務空間にある」とし、「被告の職業と勤務経歴を考慮すれば、被告は配送運転手が物流会社の従業員ではなく、冷蔵庫の中の菓子を食べろと言う権限もないことを十分に知り得たとみられる」と判断した。Aさんに窃盗の前科がある点も考慮したという。
Aさんは一審判決を不服として控訴。控訴審の裁判長は9月18日の公判で「事件を突き詰めると、400ウォンのチョコパイと650ウォンのカスタード菓子を持ち出して食べたということなのだが、ここまで厳しくやらなければならないのか」と述べた。Aさんの弁護士は「事件が発生した場所は誰でも出入りできる事務室だ」とし「本当に菓子を盗もうとしたならば、(菓子箱を)丸ごと持って行くはずだ。チョコパイ1個、カスタード菓子1個だけを持っていくだろうか」と疑問を呈した。
今回の事件について、元検事のキム・ジョンミン弁護士は自身のソーシャルメディアで、「起訴猶予で終結すべき事案なのに、全面的に検察の誤りだ」とし、「人間と社会に対する理解が不足していれば、まともな判事と検事とは言えない」と語った。
これに対し、検察関係者は「一般的な刑事事件手続きで容疑が認められる状況では、被害者が処罰を望み、被疑者が容疑を否認すれば、起訴するのが原則だ」とした上で、「A氏の場合、窃盗の前科もあるため起訴した」と話した。
Aさんの弁護士はは「Aさんがこれまでに使った訴訟費用だけで1000万ウォンを超える」とし、「下請けの警備会社に所属し、有罪となれば解雇される可能性もある」と懸念を示した。
全州=キム・ジョンヨプ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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