韓国大法院法院行政処は、与党が刑法改正による「法律歪曲(わいきょく)罪」の新設を目指していることに関連し、「裁判官を萎縮させ、司法府の独立を弱めることで、権力が司法府を掌握するための手段として悪用されかねない」との意見を国会に伝えたことが29日までに分かった。共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)代表が法律歪曲罪立法の速やかな処理を求めたことに対し、大法院が反対の立場を明確にした格好だ。
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韓国大法院法院行政処は、与党が刑法改正による「法律歪曲(わいきょく)罪」の新設を目指していることに関連し、「裁判官を萎縮させ、司法府の独立を弱めることで、権力が司法府を掌握するための手段として悪用されかねない」との意見を国会に伝えたことが29日までに分かった。共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)代表が法律歪曲罪立法の速やかな処理を求めたことに対し、大法院が反対の立場を明確にした格好だ。
【写真】「チョヨトミヒデヨシ」 韓国国会でチョ・ヒデ最高裁長官の合成写真を掲げる議員
法院行政処は国会法制司法委員会に提出した意見書で「法律歪曲罪は裁判官を処罰対象とし、政治的に悪用される余地がある」とした上で、「特に政治問題化する事案では、裁判官の信念による裁判に対して法律歪曲の疑いがかけられる危険性がある」と指摘した。 また、「裁判官の独立的な司法権行使を阻害する恐れがある」とも指摘した。李在明(イ・ジェミョン)大統領の公職選挙法違反事件の審理差し戻しで有罪判決が出る可能性が高まる中、民主党の「司法府懐柔」の試みに大法院が真っ向から反発したことになる。
民主党が提案した刑法改正案は、判事や検事が裁判や捜査で特定人に有利または不利になるように事実関係を操作するか、法律を歪曲して適用すれば、10年以下の懲役などに処すとする内容だ。大法院長や検察総長も法律の歪曲を指示した場合、処罰対象になる。与党は「李大統領に有罪判決を下した曺喜大(チョ·ヒデ)大法院長と尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の勾留取り消し決定を下した池貴然(チ·グィヨン)ソウル中央地裁部長判事らが処罰対象だ」と主張している。
■大法院「法律歪曲罪は神権・王権を守るためにつくられた」
大法院法院行政処が国会に対し「権力の司法府掌握」の危険性を警告したのは異例だ。法曹界は「民主党が『司法改革』を掲げて大法院判事増員と裁判訴願導入に続き、法律歪曲罪まで推進したことで、大法院が予想されるさまざまな副作用を強く批判し、ブレーキをかけようとしている」と受け止めている、
法院行政処は国会に提出した意見書で「司法の信頼向上」「国民基本権保護」という立法趣旨には共感しながらも、「法律歪曲罪は歴史的に神権と王権などを守るための手段として活用されてきた」と指摘した。現代民主主義社会への移行以前は独裁者や専制君主が自分に有利な法律をつくり、それに従うように判事をコントロールするために法律歪曲罪を導入していたことに言及したものだ。
大法院は裁判官の政治化や逸脱防止などプラスの効果を見込んで「法律歪曲罪」を維持している国々も独裁権力の前では法律自体が無力化されたことを強調した。法院行政処は「法律歪曲罪が存在したドイツやロシアの場合にも、ヒトラーやスターリンの独裁下では制度が無力だった」と話した。独裁権力のために働いた判事を断罪するのではなく、独裁権力が司法府を掌握する手段として悪用したという意味だ。先進国で法律歪曲罪が存在するのはドイツ、スペイン、デンマークなど一部だ。
法院行政処は「憲法は裁判官に裁判上・職務上の独立を認め、法解釈と適用に幅広い裁量を認めているが、そうした裁判官の裁量と『法律歪曲』をどのように区分するかも容易ではない」とした。法律歪曲という概念が抽象的なので、恣意(しい)的に適用される危険性を指摘したのだ。 特に特定人に「有利または不利に」法律を歪曲した判事を処罰するという点に関しては「裁判での有利・不利は相対的かつ主観的なので、一方が有利ならば相手は不利にならざるを得ない」とし、「法の適用範囲を制限することは困難だ」との認識を示した。
法院行政処は同時に「法律歪曲罪は裁判官の職務遂行を過度に萎縮させかねない」とし、「新しい世相を反映した前向きな判決、少数に対する人権保護などに障害となり得る」と懸念した。判事が事実関係を操作したり判決を故意に覆したりした場合、あえて法律歪曲罪を新設しなくても現行の裁判官弾劾制度などで十分に制裁できるとも指摘した。
一方、法院行政処は民主党の大法院判事12人増員案に対しても事実上反対を表明した。法院行政処は「大法院判事の過半数または絶対多数が一度に任命されれば、政治的論争が発生し、後任の大法院判事を任命するたびに論争が繰り返される可能性が高い」とし、1~2年で1~2人ずつ順次増員する方策を検討すべきとした。
大法院が公に反論したのは、民主党が李在明(イ・ジェミョン)大統領の公職選挙法違反事件での有罪趣旨の判決が出たことに対する報復立法に乗り出したとみているためだ。民主党は昨年、法律歪曲罪の導入を初めて推進した際、適用対象を検事に制限したが、李大統領の公職選挙法事件の審理が差し戻されたことを受け、対象を判事にまで広げた。民主党の金容民(キム・ヨンミン)国会議員らは、判事を狙った法律歪曲罪法案3件を相次いで提出し、現在国会法制司法委で審議待ちの状況だ。民主党の鄭清来代表は最近、曺喜大大法院長の辞任を迫り、「適用すべき法を誤って適用し、存在しない罪を有罪とし、存在する罪を無罪と判決した判事は法律歪曲罪で処罰しなければならない」と述べた。
これに関連し、野党国民の力は「李大統領一人のための違憲的で反民主的立法」だとして反発している。同党の宋錫俊(ソン・ソクチュン)国会議員は「李大統領に有罪判決を下した判事を処罰し、関連事件を無罪にするための法律制定で、独裁政権でのみ可能な発想だ」と批判した。
パン・グクリョル記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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