▲写真=UTOIMAGE
次期大統領選挙の有力候補に挙げられていた現職市長が突然逮捕された。賄賂の授受、詐欺、スパイ行為など適用された疑惑だけでも140件を超える。検察は懲役2430年を求刑し、彼が所属している第1野党の解散手続きまで取り上げた。与党が行いそうな政治的発言を検察が前もって実践に移したのだ。野党は「戦車に代わり法服(裁判官や弁護士、検察官、裁判所書記官)によって進められたクーデター」と反発した。
【時系列で見..
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次期大統領選挙の有力候補に挙げられていた現職市長が突然逮捕された。賄賂の授受、詐欺、スパイ行為など適用された疑惑だけでも140件を超える。検察は懲役2430年を求刑し、彼が所属している第1野党の解散手続きまで取り上げた。与党が行いそうな政治的発言を検察が前もって実践に移したのだ。野党は「戦車に代わり法服(裁判官や弁護士、検察官、裁判所書記官)によって進められたクーデター」と反発した。
【時系列で見る】大庄洞裁判控訴放棄に至るまでの流れ
最近トルコで起きた出来事だ。人口1600万人の最大都市イスタンブールは、市民たちの支持を二分する勝負所と言える都市だ。同市の市長が大統領選に出馬すれば、現大統領を15ポイント差でリードするという世論調査が出されたことで、検察は急いだ。権力側に立つことを選んだ検察が、大統領選での敵対候補の政治生命を断つために行動に出たという見方が支配的だ。逮捕されてわずか8カ月で最大2430年の刑を求刑するほど膨大な犯罪容疑を立証した一瀉千里(いっしゃせんり、川の流れが速く、勢いの激しいこと)の捜査だった。
トルコは、エルドアン大統領が内閣制の首相だった時代を含め、22年間政権を握っているが、意外にも正常な民主主義国家の姿を帯びている。大統領選挙と総選挙、地方選挙が定期的に行われ、野党も中央・地方政治によく進出する。NATO(北大西洋条約機構)加盟国として米国など西側諸国とも緊密な関係を維持している。最近、ガザ地区での戦争、インド・パキスタン紛争などで仲裁外交を行うなど存在感を高め、EU(欧州連合)への加盟も進めている。
長期執権の足かせとなる憲法を改正した際も、手続きの面では民主主義に従った。首相の再任を禁止した党憲によって大統領になり、議員内閣制を大統領中心制に変えた。静寂に向け刀を振りかざすタイミングは逃さなかった。2016年に突然発生した軍部クーデターを鎮圧した同大統領は「民主主義を脅かす勢力を除去する」として非常事態を宣言した。大規模な粛清が行われ、長期執権への引き金となった。緻密な設計にのっとり吹き込む「嵐」に、検察はもちろんのこと、立法・司法・言論までが続々と頭を下げた。
法律の枠内なら何でもするという恐ろしい権力を前に、トルコ検察が見せた行動はどこか見覚えのある光景だった。大統領の名前が390回も登場する大長洞事件の一審判決後、検察は素早く従った。「慎重に判断せよ」という言葉を受け、被告人が控訴した裁判に検察が一切付かないという異常な前例を残すこととなった。「検察を生かすために控訴しなかった」という詭弁(きべん)まで検察庁長官の口から飛び出した。この発言を政権に向けた媚(こ)びとして捉えた国民は少なくないだろう。選管委を「ばか」と侮辱したとして、大統領の政敵に懲役4年を求刑したトルコの検察と大して変わらない。
イスタンブール市長は今年3月、自宅で逮捕された当時、落ち着いて毅然(きぜん)としていたという。拘禁に備えたかのようにきれいな白いシャツとネクタイを着用した彼は「国民の意志を込めて断じて対抗する」と明らかにした後、逮捕された。自分たちの本分を忘れて政権に頭を下げた検察の顔を一瞬だけ熱くさせる場面だったのではないだろうか。韓国の検察が顔色をうかがうべきところも、権力ではなく国民だという点を忘れないでいただきたい。
ソ・ボボム記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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