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北朝鮮の都市名を挙げてみよう。平壌・開城・新義州・咸興…。おそらく10にも届かないだろう。韓国国民による北朝鮮団体観光は2008年の「パク・ワンジャさん射殺事件」以降中止され、いかなる形態の南北交流であろうと2019年のいわゆる「ハノイ・ノーディール(米朝首脳会談決裂)」以降は全てストップした状態だ。北朝鮮を訪問したり、知ったりするに足る機会は、事実上「無い」というわけ。金正恩(キム・ジョンウン..
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▲イラスト=UTOIMAGE
北朝鮮の都市名を挙げてみよう。平壌・開城・新義州・咸興…。おそらく10にも届かないだろう。韓国国民による北朝鮮団体観光は2008年の「パク・ワンジャさん射殺事件」以降中止され、いかなる形態の南北交流であろうと2019年のいわゆる「ハノイ・ノーディール(米朝首脳会談決裂)」以降は全てストップした状態だ。北朝鮮を訪問したり、知ったりするに足る機会は、事実上「無い」というわけ。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は2023年、南北を「敵対的2国家」だとして関係断絶を宣言してもいる。
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特産品であるタバコの葉の形をした北朝鮮成川郡の集合住宅
こうした中、北朝鮮の各都市の歴史と行政、産業、社会・文化、交通などを網羅する「北韓地理誌」が相次いで発刊された。昨年2月に第1巻・第2巻が出て、このほど第3巻・第4巻が発刊された。各巻で七つから八つの市・郡を取り上げ、これまでに計30の地域を解説した。金策市・三池淵市・定州市など聞いたことのある都市から、明川郡・載寧郡・香山郡などなじみのない場所も多い。北朝鮮があのように固く錠をかけてしまっている今、こうした地域を知ることにどういう効用があるのだろうか。
■「青松のリンゴの種」を確保できる場所を求めて
書籍のタイトルは、正確には「南北交流協力のための北韓地理誌」だ。31の自治体が参加している全国南北交流協力地方政府協議会(南交協)が企画したもので、南交協は北朝鮮の地方都市と実際に交流する目的だということをはっきりさせた。北朝鮮が応えるかどうかとは別に、「姉妹都市」を探すためにまずは北朝鮮の諸都市を知ろう―というわけだ。
例えば、こんなふうに。慶尚北道青松はリンゴの本場だ。1994年に「青松リンゴ」を商標登録して地域の代表農産物として管理してきており、青松リンゴは「大韓民国代表ブランド大賞」において13年連続で大賞を取った。この名声を維持するため、高価なリンゴの花粉を輸入してきたが、北朝鮮のリンゴ農場には海外のリンゴ品種が多数確保されており、価格も安いという。気候の変化に伴い、リンゴを栽培できる土地を求めて北進する必要もある。
全羅南道莞島の特産物はノリだ。栽培が難しいノリは、1日でも海水温が25度を上回ると駄目になる。南部沿岸の水温が上昇したことで、莞島郡はノリを育てられる冷たい北朝鮮の海に注目している。
江原道平昌は、大関嶺に似た北朝鮮の地域に牛を送って放牧し、育てることを計画している。北で自然放牧して育てた方が、はるかに生産性がいいだろうとみている。
行き詰まってしまった南北関係のせいで特に進展はないが、「協力のニーズ」を有する自治体はある―という話だ。南交協の関係者は「人口消滅と気候変動、この先の食べていくすべの不足など、発展が停滞した環境の中で独自の必要に基づいて南北交流に期待をかける自治体は多い」と語った。
■金正恩は「韓国は同族でもない」と言っているが…
金正恩は2024年に地方発展政策「20x10」(10年以内に20地域に現代的工場を建設)を打ち出し、北朝鮮経済をよみがえらせると言った。これに関連して、地方都市開発を巡る北朝鮮メディアの報道は増加傾向にある。「北韓地理誌」の内容は、こうした北朝鮮の資料とグーグルアースの分析などから成る。執筆を担当した南北経済文化協力財団(経文協)は、北朝鮮の著作物についての著作権料の受領代行をしているために、北朝鮮資料に広くアクセスできる方に属する。経文協の関係者は「北朝鮮が、ひどく立ち遅れた地方の実態を隠してきたという理由もあるにせよ、韓国はあまりにも北朝鮮を知らない」としつつ「200ある北朝鮮の都市全てを取り上げられるように、引き続き北韓地理誌を発刊する」と語った。
「北韓地理誌」によると、西海岸の海州市は韓国と同じようにノリ養殖業を行っており、東海岸の端川市はマグネサイトなどが採れる「資源の宝庫」に挙げられる。朝鮮王朝時代には国王にタバコを献上していた成川郡では、最近、タバコの葉の形をした集合住宅が建てられた。詩人の白石(ペク・ソク)、金素月(キム・ソウォル)は定州にあった五山学校の出身だ。
だが、全てが金氏王朝の意向にかかっている北朝鮮の体制で「地方自治体間の姉妹関係締結」はあまりにも浪漫的な話、という指摘もある。金正恩は最近、「韓国を同族の範囲から永遠に排除する」と語った。朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大教授(北朝鮮学)は「資本・技術力がとにかく不足した状況で20x10政策も事実上座礁したと評価され、地方自治体間の協力は実効性がない」とし「親与党系の自治体が、独自に『ばらまき』の方法を探しているとも言える」と語った。一部には、自治体が実質的な成果よりも予算確保のための「南北協力」の名分づくりに重きを置いているのではないか、という見方もある。ただし、朴教授は「北朝鮮の体制崩壊など異変の可能性に備えるためにも、地理や産業、文化などをあらかじめ研究する必要はある」と指摘した。
金慶和(キム・ギョンファ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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