国民年金巨額含み損、サムスン物産合併支持が仇に

 サムスン物産と第一毛織の合併決議でサムスン側を支持した国民年金が苦境に陥った。「合併に反対すべき」とする国内外の議決権コンサルタントの勧告に反し、合併に賛成したものの、決議後の株価下落で3000億ウォン近い含み損が出たためだ。

 週明け20日のソウル株式市場では、サムスン物産と第一毛織の株価が株主総会当日(17日)に続き2日続落となった。サムスン物産の筆頭株主(持ち株比率11.61%)で第一毛織の3位株主(5.04%)である国民年金も多額の含み損を抱えた。株価の2日続落で、国民年金はサムスン物産株で1686億ウォン、第一毛織株で1292億ウォンの計2978億ウォン(約320億円)の含み損を出した。

 国民年金が合併に賛成した理由は正式には明らかにされていないが、両社の合併が実現せず、株価が暴落すれば、年金が損失を受ける可能性があるとの判断が働いたとされる。また、サムスン物産と第一毛織の株式を時価的にはほぼ同じ金額(それぞれ約1兆2000億ウォン)保有しており、合併比率がサムスン物産にやや不利でも、第一毛織には有利に働くため、基金全体の利益には支障がないとの判断を下したとみられる。

 ところが、合併が承認されたにもかかわらず、両社の株価はそろって下落し、当初の論理は破綻した。その上、国民年金は9月1日に合併後の新生サムスン物産が発足すれば、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長、KCC(9.0%)に次ぐ3位株主(7%)に転落する。

 さらに株主総会での採決で敗北したエリオット・マネジメントが国民年金を貶めようとする動きを見せており、国民年金側は苦しい立場だ。エリオットは国民年金が議決権行使専門委員会に案件を上程せず、自発的に合併賛成を決めたことは提訴に値するとの文書を重ねて送っている。外国メディアも批判している。米ウォール・ストリート・ジャーナルは20日の社説で、「国民年金の決定は『経済民主化』の旗を掲げ財閥を規制するという政府の約束に反する。韓国社会が自由市場に反する行為を愛国心という名の下で黙認している」と皮肉った。

 これについて、国民年金関係者は「国民年金は公共機関であり、外信が批判する国家機関とは距離がある。愛国心ではなく、該当企業の長期的な株主価値と利益を考慮し、投資決定を下したものだ」と反論した。

チェ・ギュミン記者
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