【寄稿】朝鮮王朝の亡国を招いた道徳政治

 特に文在寅政権の1年目において、朝鮮王朝の道徳政治のデジャビュを経験した。閉ざされた世界観に安住したまま、価値と精神世界を重視し弁舌と見せ物に重きを置く「386(1990年代に30代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)コードの政治」は、方法論不在という側面から、現代の朱子学となっている。平和や正義、自主といった希望的楽観と主観的幻想は、当面は政権人気のバブルをつくり出すだろうが、水面下の安全保障不安や崩れゆく経済、そして離れていく民心を最後まで隠すことはできない。

 京都大学の小倉紀蔵教授によれば「韓国社会は、華麗な道徳争奪戦を繰り広げている一つの巨大な劇場」だ。道徳を通して政権を取り、不道徳を理由に全てを失う政治文化、という意味だ。そういえば、昨今の積弊清算運動の渦中で、文在寅政権を狙った道徳政治の逆襲は既に始まっている。「コメント操作」事件がその前兆だ。この政権が、それでも成功するつもりなら、韓国現代史を花開かせた方法論の政治を排斥するのではなく、尊重し継承しなければならない。繰り返される道徳政治の悪循環を清算することが、本物の進歩の意味にして力だ。

全相仁(チョン・サンイン)ソウル大学環境学部教授(社会学)

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