【コラム】大韓民国の歴史を台無しにしているのは誰か

 さらに危なげな徴兆は、「大韓民国とは何なのか」「大韓民国の国民とは誰なのか」という国家と国民のアイデンティティーが揺らいでいることだ。基礎が揺らいでいるだけに、国家全体が揺さぶられてしまう。文大統領は、大韓民国の臨時政府樹立100周年記念式典での発言で「人口5000万人を突破し、国民所得が3万ドル(約330万円)を上回る『30-50クラブ』に属する7カ国のうち、第2次世界大戦後に誕生した新生独立国家は韓国だけ」とした上で「一部で大韓民国のあるがままの歴史を認めようとはせず、100年にわたった成果をけなそうとするのは、プライドを捨てる行為」と批判した。思わず耳を疑いたくなる話だ。

 大統領の発言の3日前に大統領直属の「三・一独立運動および大韓民国臨時政府樹立100周年記念事業推進委員会」は、政府の庁舍がある世宗路交差点のビルに10人の独立運動家の大型肖像画を掲げた。そして、上海臨時政府の初代大統領であるとともに大韓民国の初代大統領である故・李承晩(イ・スンマン)大統領の肖像画だけをこっそりと外した。毎年国民から5000億ウォン(約490億円)近い視聴料を半強制的に取り立てている国営テレビのKBSは「故・李承晩と故・金日成(キム・イルソン)は、米国とソ連が韓半島(朝鮮半島)を分割統治するために連れてきたかいらい(操り人形)」とし「故・李承晩元大統領を国立墓地から掘り出してしまうべきだ」との内容を放送した。功と過が共に存在するとは言うものの、これではチャーチルを除いて英国の歴史を、ドゴールを除いてフランスの歴史を、アデナウアーを除いてドイツの歴史を物語るのと何が異なるというのか。こうした主張をする人々も、故・金日成を除いて北朝鮮の歴史を書くとは言わないだろう。

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