投資の背景にはNAND型フラッシュメモリーの需要急増に対する期待がある。在宅勤務やオンライン教育、動画視聴などデータ使用量が増えているためだ。市場調査会社IDCは、2016年に16.1ゼタバイト(ゼタは10の24乗)だった世界のデータ発生量が25年には163ゼタバイトに増加すると見込まれる。10倍に増えれば、それに見合うデータを保存するNAND型フラッシュメモリーの需要も増えるとの判断だ。サムスン電子は今年4月の業績発表に際し、今年下半期のNAND型フラッシュメモリーの需給状況が追い風になるとの見方を示した。
首位サムスンのライン増設を受け、日本のキオクシア(旧東芝メモリ)、米マイクロン、インテル、韓国のSKハイニックスなど2-6位のライバルメーカーは緊張せざるを得ない状況だ。NAND型フラッシュメモリーは昨年、価格が暴落し、後発メーカーは赤字の崖っぷちに追い込まれた後、今年は新型コロナウイルスによる予想外の需要回復で安堵(あんど)しているところだからだ。サムスンは現在、中国・西安市にもNAND型フラッシュメモリーの生産ラインを増設している。サムスン電子の生産ライン増設が今後、後発メーカーのライン増設につながるかは推移を見守る必要がある。
半導体業界関係者は「サムスン電子が量産時期を来年下半期に定めたことは、首位を十分に守れるという自信の表れだ。2位の日本のキオクシアがシェアを守るには追加投資が必要となるが、追随は容易ではないだろう」と話した。