「国民にとって良いものを国が決める」というのが社会主義路線だ。ミルは懐疑的だった。 「自分の人生を設計し、選択する人だけが持って生まれた能力を使うことになる」と信じていたからだ。ミルの命題が真であるという事実は、歴史が何度となく証明してきた。個人の自由を抑圧した体制で成功した事例は珍しい。
一部の国民は、新型コロナウイルスという局面で国の力量強化が必要だと強弁する。こうした時、「韓国も開発独裁をしたではないか」と朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領まで引き合いに出してくる。これは誤った主張だ。米国の学者ディアドラ・N・マクロスキーは著書『なぜリベラリズムは機能するのか』=原題『Why Liberalism Works』=で、「韓国の発展が国家主義のおかげならば、100%国家主義の北朝鮮のせい惨な実態を説明することはできない」と指摘する。マクロスキーは韓国の成功の秘訣(ひけつ)に、賢明なリーダーシップと共に「自分の能力に誇りを持つ個人たち」の存在を挙げる。一方、北朝鮮の住民は100%奴隷であるため、発展できなかったと言っている。ミルも「自由論」で「個別性を踏みにじる体制は、その名が何であっても、どんな名分を掲げても、最悪の独裁体制だ」と喝破した。大韓民国の歴史は自由の偉大さと効用性を立証する生きた証拠だ。なぜこの成功の歴史を無視して、あえて敗北した歴史に追従しようとするのか。
金泰勲(キム・テフン)出版専門記者