第三に、それでもトランプ政権当時のように鋭く刃を立てることはできないとみられることだ。政策が柔軟化するという意味ではない。政策は依然として競争的でも外交的なレトリックはこれまでより侮辱的、敵対的ではなくなるという意味だ。
バイデン大統領の中国政策について、4つの潜在的モデルを予測することが可能だ。ある1つのモデルにばかり従うことはないだろう。むしろ当面する問題によって、異なる人物が異なるモデルで引き続き緊張と綱引きの状況をつくり出すだろう。
このうち、1つのモデルが「戦略的権力競争」だ。すなわち、米国と中国による物理的な力の競争だ。このモデルでは両国政府を率いる人物がバイデン大統領と習近平国家主席であることは特に重要ではない。2つの大国はシステム内で地位のために幅広く競争せざるを得ない。こうした戦略的競争関係は領土、世界的なルールと規範、国際間での政治的権威という国際システムの3つの側面で米ソ冷戦と同様の様相になるだろう。
2つ目の衝突は貿易のいくつかの分野で展開されている激しい競争だ。例えば、新型コロナウイルスの大流行で医薬品とハイテク分野の脆弱性が浮き彫りとなったが、これら分野のサプライチェーン復元が重要な競争領域になる可能性がある。人工知能(AI)、宇宙開発、次世代の無線通信、モノのインターネット(IoT)など4つの産業革命分野も重要なフィールドだ。中国の技術に対する依存度を軽減している分野でもある。韓国は既に5Gネットワークから中国・華為の設備を排除するよう求める米国の要求でこの問題をある程度経験している。