市議会が市長を選出する間接選挙制を推進する韓国政府、専門家らは懸念の声

 地方自治体の首長を住民が直接選ばず、地方議会が間接選挙制に基づいて選べるようにする内容を盛り込んだ特別法の制定を韓国政府が進めている。1995年以降維持されている韓国の自治体首長直選制に変化をもたらしたいというわけだ。だが専門家らは、地方議会が自治体長を選ぶことになれば地方議員の権限が肥大化しかねない、と懸念を示した。「草の根民主主義」の核心である直選制を間接選挙制に変えることは望ましくない、という指摘もある。

 17日に行政安全部(省に相当。行安部)や自治体などが明らかにしたところによると、行安部は自治体の機関構成形態を多様化するための特別法制定を推進している。道知事や市長・郡守・区庁長など自治体長の選出方式を、現行の直選制方式のほかに三つの案を追加し、自治体が選ぶようにする内容を特別法に盛り込む計画だ。行安部は今月24日まで、各自治体へこの件についての意見が欲しいと要請した。

 行安部が提示した最初の案は、地方議会が投票権を持ち、地方議員ではない志願者の中から自治体長を選出する方式だ。二つ目の案は、地方議会が地方議員の中から自治体長を選ぶ方式。三つ目は、自治体長の選出方式自体は住民が直接選ぶ直選制を維持するものの、自治体長の人事・監査・組織・予算編成の権限を地方議会に分散させる方式だ。行安部は、自治体長の選出方式の変更を望む自治体はこの3案のうち一つを選べるようにしたい方針だ。選出方式を変えたい場合には住民投票を行うこととした。現行の選出方式をそのまま維持することもできる。

 こうした案について行安部は、今年初めに改正地方自治法が施行されたことに伴う後続措置だと説明した。2020年12月に韓国国会を通過し、今年1月13日に施行された改正地方自治法の4条は「法律で定めるところにより、自治体長の選任方法を含む自治体の機関構成形態を変えることができる」という内容を定めている。「地方議会と執行機関の構成を変えようという場合には住民投票を経なければならない」という内容もある。

 行安部は2月9日と10日、全国の広域・基礎自治体を対象にオンライン説明会を開いた。今後、意見集約を行った後、国会での立法手続きを推進する計画だ。行安部の関係者は「改正地方自治法の趣旨に基づき、後続措置として特別法を推進する」とし「立法が進んだ場合、今年6月の地方選挙で構成される民選8期には適用されず、2026年の民選9期から適用があり得るだろう」と語った。

 だが、間接選挙制などに対する専門家らの懸念は小さくない。キム・ヒョンジュン明知大学教授は「地方自治制度の核心は自治を担当する人物を住民が直接選ぶことなのに、間接選挙制はその基本精神に背くもので、望ましくない」と語った。地方議会の影響力が過度に強まるだろうという指摘もある。イ・サムヨル延世大学行政学科教授は「地方議員が自治体長まで選ぶとなれば、けん制機能が弱まる」とし「地方議会に多数進出している地域実力者の勢力が大きくなるという副作用が起きかねない」と語った。ソウル所在のある区庁の関係者も「現在も公益より自分の利益に主な関心がある地方議員が一部存在するのに、こうした人々により大きな力を与えることになる」と語った。

 今年、大統領選挙(3月9日)と地方選挙(6月1日)の迫る中で話が進んでいることへの問題提起もある。キム・ヒョンジュン教授は「地方権力のルールを変えることは選挙に影響を与えかねない事案で、重要な選挙を控えてこれを推進するのは望ましくない」と語った。

キム・ユンジュ記者、チャン・グンウク記者

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