少し前、ケイ海明・駐韓中国大使が韓国野党の代表と会談した席で韓国政府と韓国国民に対する脅迫的な見解を公に朗読し、これに対する強い非難世論で国が騒がしかった。旧韓末に植民地総督のごとく振る舞い、ありとあらゆる横暴に及んだ清国代表・袁世凱とケイ大使を比較し、「好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)」として追放しよう、という主張もかなりあった。しかし、袁世凱とケイ海明のケースは全く異なるものだ。こんにち、海外駐在大使が本国政府の指示や事前許可もなしに、あのような問題のある発言を公に行うのは不可能だ。もし韓国大使が政府の許可なくあのような騒動を起こしたら、本国召還は免れないだろう。しかも、高度に統制された共産国家・中国の大使が、北京当局の指示なしにあんなことをやるというのは想像もできない。
従って、この事件で非難され、謝罪して再発防止を約束すべき主体はケイ海明大使個人ではなく、その裏であのような外交ショーを企画し、指示した中国政府と外交当局になるのは当然だろう。そうすることで、韓国を中国の属邦くらいに軽く考えて宗主国のように振る舞ってきた中国政府の長年の慣行を本から断つことが必要だ。この問題に関するあらゆる責めをケイ海明大使に負わせて終結処理するやり方の方が、外交的には多少楽で、後の災いについての負担も少ないだろう。ただし、そんな弥縫(びほう)策で適当にこの事案にふたをしてしまったら、これからも類似の事件が繰り返されることは避けられないだろう。
韓国に対する中国の外交的な挙動がこのように圧迫と脅し一辺倒で展開しているのは、中国政府だけの責任ではない。韓国政府がこれまで自ら、自国を「大国の前の小国」と称し、中国の不当な言行に対して一貫して屈従と沈黙を保ってきたことによる、当然の帰結だ。眼前の政治的・経済的利益故に、あるいは安美経中(安全保障は美国=米国、経済は中国)の幻想に惑わされ、中国の無理な横暴を自ら合理化して沈黙してきた韓国政界・経済界も、その責任から自由ではあり得ない。今、中国経済が徐々に沈んでいき、対中貿易黒字も幕を降ろしているだけに、韓国の国民各界が志を一つにして、これまでの歪曲(わいきょく)された韓中関係を全面リセットする勇気を発揮すべき時が来ている
李容濬(イ・ヨンジュン)世宗研究所理事長・元外交部北核大使