ロシアの極超音速ミサイル「キンジャール(Kinzhal)」がウクライナに配備された米国製のパトリオット防空ミサイルに迎撃された後、中国が騒然となっています。これまで「空母キラー」「ゲームチェンジャー」と大々的に自慢してきた中国の極超音速ミサイル「東風(DF)17」も迎撃されかねないという不安感が強まったんですね。
キンジャールは、ウラジーミル・プーチン大統領が「現在と未来のいかなるミサイル防衛システムも突破できる」とアピールしてきた、ロシアの次世代兵器です。このミサイルが1980年代に開発されたパトリオットにやられるのを見て、ショックが大きかったのです。
中国のソーシャルメディアでは「DF17は大丈夫なのか」という書き込みを容易に見つけることができます。中国国内の専門家らは「DF17はキンジャールに比べて性能が優れているから迎撃は容易ではないはず」と主張しますが、苦しそうに見えました。
■「空母キラー」と自慢してきたが…
台湾統一を狙う中国が最も恐れるのは、米軍の介入です。西太平洋に配備されている米国の空母機動部隊が参戦したら、短期間で台湾を制圧するという中国の狙いが失敗に終わることは避けられません。かつて数回あった台湾危機の際も、中国は米空母機動部隊の武力誇示に膝を屈しました。
中国は米空母機動部隊に対応するため、これまで対艦ミサイル開発に力を入れてきました。東風(DF)21、鷹撃(YJ)21といった対艦弾道ミサイルで空母の台湾海峡接近を遮断するという戦略でした。これを俗に「接近阻止戦略」と呼びます。ただし、こうした弾道ミサイルが米空母機動部隊のミサイル防御網を突破するのは容易ではありません。
中国は2019年の建国70周年軍事パレードで極超音速ミサイル「東風(DF)17」を公開し、ひとしきり気勢を上げました。最高速度マッハ10で飛ぶ極超音速滑空体(HGV)「東風(DF-)ZF」を搭載し、米国のミサイル防御網を突破して空母機動部隊を攻撃できる-と大々的な宣伝攻勢をかけました。中国国内の軍事専門家らも「米空母はDF17の射程距離外にとどまるのがよかろう」と大声を上げました。DF17の射程は1800キロから2500キロ程度だといいます。
米国防総省や統合参謀本部も、中国の極超音速ミサイル技術の発展スピードは急速で、脅威だと評価しています。ただし、迎撃や防御は容易でないものの、不可能とは思っていません。複雑な機動をする極超音速ミサイルの追跡のため、パトリオットシステムのレーダーの性能を大幅に引き上げ、レーダー探知の死角地帯を減らすためHBTSS(極超音速・弾道弾追跡宇宙センサー)という新たなシステムも開発し、間もなく配備するといいます。