サウジアラビアのパートナー、日本から「経済と安保の全てを満たす」韓国にシフト(上)

サウジアラビアが尹大統領を特別に歓迎

 「ミスター・エブリシング(Mr. Everything)」とも呼ばれるムハンマド皇太子は通常の国の首脳クラスでは簡単に会えないため、外交関係者の間では「隠遁(いんとん)の君主」と呼ばれている。そのムハンマド皇太子による破格の歓迎の背景には、韓国に対する厚い信頼があるようだ。韓国大統領室関係者が説明した。両国の経済協力は1973年に三換企業がアルウラ-ハイバル高速道路建設事業を受注した時から始まったが、その後積み上げられた信頼がサウジアラビアのトップに確実に認識されているのだ。その間に両国が置かれた状況や国の戦略にも変化があった。1970年代の中東ブームで稼いだ外貨を圧縮成長の呼び水とした韓国は、今や建設分野はもちろん半導体や電気自動車などハイテク製造業の技術やデジタル分野で先進国となっている。その韓国の発展モデルにムハンマド皇太子が注目しているのだ。

 サウジアラビアは10年以上前まで韓国を「道路と橋を工期に合わせて完成させる国」程度の認識しかなかったというのが外交専門家の話だ。実際、隣国のアラブ首長国連邦(UAE)が2009年12月に韓国に約20兆ウォン(約2兆2000億円)規模のバラカ原発建設を任せた時、サウジアラビア王室はUAE王室に「韓国の技術を信じられるのか」と懐疑的な反応を示したという。当時の政府関係者の話だ。ところがその後も韓国の技術力を見守ってきたUAE王室は「韓国は違う」とサウジアラビア王室に紹介したという。ある韓国政府高官は「サウジアラビアの石油関係者が国際原油価格の上がるたびに韓国に連絡し、『申し訳ない』と了解をもとめてくる。これは過去にはなかったことだ」と述べた。

 サウジアラビアとUAEは数十年にわたり友好関係を維持している。しかし両国は中東や世界の石油市場ではライバルでもあるため、両国のライバル関係がサウジアラビアを韓国に引きつけているとの見方もある。尹大統領のサウジアラビア国賓訪問も今年1月のUAE訪問後、サウジアラビアからの強い要請があって実現したという。

【表】ムハンマド・ビン・サルマン皇太子による尹大統領歓待

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