「世界的な彫刻家」じゃなかったの? 金大中元大統領の故郷・荷衣島の天使像は詐欺師の作品だった

荷衣島に318点、青島郡に20点設置
数億ウォンを手にした70代の男に懲役刑
パリ第7大学教授などの経歴もほとんど虚偽
彫刻の処理に頭を痛める新安郡

 刑務所に服役していた1995年に男は高卒学力検定考試(高卒認定試験)に合格した。ただし彫刻としてしっかりした教育を受けたり、海外で彫刻家として活動したりした経歴はない。また男が履歴書に記載したパリの大学に碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)として招聘(しょうへい)されたことも、フィレンツェの美術館専属彫刻家だったことも、また平昌オリンピック文化芸術広報大使を務めたこともなく、世界的に有名な彫刻家という経歴も全て虚偽だった。

 男は2018年に新安郡に「ノーベル平和賞を受賞した金大中元大統領の出身地である全羅南道新安郡荷衣島を『平和の島、天使の島』にしたい」と持ちかけた。提案を受け新安郡は19億ウォン(約2億円)をかけて荷衣島に天使の彫刻など合計318点を設置し、19年6月28日には「垣根のない天使像美術館」をオープンした。新安郡の朴禹良(パク・ウリャン)郡守(郡の首長)は当時、男に名誉郡民証を手渡し、感謝の思いを伝えた。

 新安郡は男の経歴詐称が表面化した昨年2月に男を警察に訴えた。新安郡の詐欺疑惑事件は青島郡の事件と並行して審理が行われた。裁判所は青島郡の事件では「男が直接制作したものではなく、中国製だった」として有罪と判断したが、新安郡の事件については「詐欺行為とだまし取った額の間に因果関係があるとは認めがたく、契約の締結が犯罪につながる意図的なものだったとも判断し難い」として無罪を宣告した。

 この判決に新安郡は困惑している。天使像設置の経緯を記した案内表示は昨年撤去し、説明文から男の履歴なども削除した。新安郡文化観光課は「こちらが被害者と考えて男を告訴し、裁判で容疑が確定すれば民事訴訟を起こす予定だったが、無罪となったのでどうすればよいのか」「検察が控訴するか、あるいは住民の意見などを集約した上で、作品をどう処理するか判断したい」との方針を示している。

 昨年7月に慶尚北道は青島郡の詐欺造形物設置について監査を行い、青島郡とキム・ハス郡守に警告の処分を下した。また関係する職員8人についても懲戒を要求した。

イ・スンギュ記者

【写真】自称「世界的な彫刻家」チェ・パオロの天使像

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