憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾審判の結論が、早ければ今週にも出るだろうと見込まれている。憲法裁は2月25日に尹大統領の事件の弁論を終結させた後、3月17日の時点で20日にわたり結論を出していない。以前行われた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領および朴槿恵(パク・クンヘ)大統領=いずれも肩書は当時=のケースでは、弾劾審判の終結から宣告までそれぞれ14日、11日かけていた。
法曹界からは、各争点で裁判官の意見が異なっていて評議に長い時間がかかっている、との解釈が出ている。結論を巡っても、憲法裁が尹大統領の弾劾訴追を認めるだろうという見方から、棄却あるいは却下するかもしれないという声まである。本紙は16日、それぞれ尹大統領の弾劾の認容、棄却、却下を予想する憲法の専門家の意見を聞いてみた。
【グラフィック】尹大統領に対する捜査・弾劾審判に見る「手続き無視」
■丁泰鎬(チョン・テホ)慶煕大学ロースクール教授「国会に軍隊を動員、違憲は明白…さもなければ戒厳が乱用されるだろう」【弾劾認容】
憲法裁判所は、裁判官8対0の満場一致で尹錫悦大統領の弾劾審判を認めるだろう。大統領が兵力を動員して現行憲法秩序を侵害したという点は明白だからだ。罷免を免れ難い重大な憲法違反だ。法理と常識に基づいて判断するなら、認めるほかに結論は出せないと思う。
非常戒厳の宣布は手続き的にも実体的にも憲法と戒厳法に背いている。特に、国会や中央選挙管理委員会など憲法機関を掌握しようとしたということが認められたら、波紋を避けるのは困難だろう。尹大統領は国会無力化、非常立法機構設置などを試みて新たな体制を構築しようとした。憲法守護の義務がある大統領が憲法を除去しようとしたのだ。
非常戒厳がわずか2時間半であっさり終わったように見えるが、これは計画が失敗したからであって、違法性が軽微だからではない。憲法裁がこれを重大な憲法違反と見なさないなら、将来、大統領が政治的危機に直面したとき非常戒厳を乱用する危険が高まる。最終的に戒厳が政治の手段として悪用されかねない「高速道路」が敷かれることになるわけだ。
尹大統領側が提起した弾劾審判の手続き的問題は「引き延ばし」戦略に過ぎない。弾劾審判は一般の刑事手続きとは異なる特別な懲戒手続きで、憲法裁はこれに反しない範囲内でのみ刑事訴訟法を準用すべきだ。刑事訴訟法にそのまま従わないことを問題にして審判手続きの正当性を揺るがすことはできないだろう。最近、裁判所が尹大統領の勾留取り消しを決定し、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の捜査の過程に対して一部疑問を提起したが、尹大統領が公捜処の捜査にきちんと応じたことはなく、弾劾審判の大勢には支障はないだろう。
現在、憲法裁は左顧右眄(さこうべん)して決定を下せずにいるわけではないと思う。盧武鉉、朴槿恵大統領のときは憲法裁がもっぱら大統領の事件にだけ集中できたが、今回は状況が違う。他の弾劾事件も同時に審理、宣告しているので、憲法裁のエネルギーが分散することは避けられないのだ。
一部の裁判官が細部の論理で意見の差を示すことはあり得るが、棄却の意見を出すほどではないと思う。国論分裂が既に深刻化している状況なので、憲法裁が憲法の守護者としての役割を尽くそうと思うのであれば、一つにまとまって声を上げる必要がある。それでこそ弾劾決定後の社会的混乱を最小限にすることができる。
大韓民国は「法治主義」に基づく民主主義国家だ。国民の多数が望めば何でもできるわけではなく、法の枠内で民主的手続きが守られなければならないということを意味する。大統領が国民の多数の選択を受けたとしても、憲法に違反したら責任を取るべきだ。
憲法裁判は政治的対立を文明的に解決する手段だ。結果が気に入らなくて服さないということでは、極度の混乱と内戦につながりかねない。弾劾が認められた場合、尹大統領の支持者らの喪失感が大きいことは間違いないということも理解している。しかし大韓民国の共同体の平和と維持のために、いかなる結果であろうと受け入れられる姿勢が必要だ。