認容・棄却・却下…韓国の憲法学者3人が予想する尹大統領弾劾審判の行方

■黄道洙(ファン・ドス)建国大学ロースクール教授「違法性は罷免するほどではない…証人や証拠調べも不十分」【弾劾棄却】

 尹錫悦大統領の弾劾訴追事由の核心は国憲紊乱(びんらん)と戒厳法違反だ。昨年12月3日の非常戒厳当日に開かれた国務会議(閣議に相当)は、会議の時間がわずか5分で、会議録も作成されず、一定の部分で手続き的瑕疵(かし)があった。しかし大統領を罷免するほどに違法性は重大ではないと思う。残るは、国会封鎖・政治家逮捕などの国憲紊乱があったかどうかだ。

 憲法裁判所は、尹大統領の弾劾審判の弁論を進めるに際して証人尋問の時間を90分に制限し、証人が否認した検察の調書を証拠として採択するということもやった。証人や証拠調べが不誠実な形で行われたのだ。特に、尹大統領側が「不正選挙疑惑」に関連して中央選挙管理委員会のサーバー鑑定を裁判部に3回も申請したのに、納得できる事由もなく全て棄却した。

 心証を形成する証拠が足りず、国憲紊乱容疑に関連して法律違反・憲法違反があったか、その水準がどの程度なのかを判断できない状態だ。このように大統領を弾劾すべきかどうか判断する証拠が足りないと考える裁判官が数人いるものとみられる。裁判官8人のうち少なくとも2人以上は「証拠が足りない」と判断して棄却を決定するだろうと思う。

 憲法裁が弁論終結から20日たつにもかかわらず宣告期日すら決められずにいることも、証拠不足が原因だと考えている。全般的に審理が不十分なせいで、裁判官の間で追加の弁論や証拠調べなどを巡って「生みの苦しみ」が生じている可能性もあるからだ。

 一部の裁判官は、これまでの裁判の内容だけでも結論を出すに十分だと考えるかもしれないし、一部の裁判官は足りないと考えるかもしれない。このまま宣告を強行すべきかどうかを巡って裁判官の間で意見が分かれたのだろう。過去10年ほど憲法裁で憲法研究官として働いた経験に照らしてみると、十分に予想可能な状況だ。

 こうした状況が続いた場合、尹大統領に対する宣告は文炯培(ムン・ヒョンベ)所長権限代行と李美善(イ・ミソン)裁判官の任期が切れる来月18日以降にずれ込むこともあり得る。宣告に関連した各裁判官の意見の相違が縮まらないのであれば、文権限代行の立場からは、宣告を急ぐ理由はない。万一、弾劾が認められなければ、進歩(革新)陣営のありとあらゆる非難が自分に向かうだろうと分かっているからだ。だから文権限代行と李裁判官が憲法裁を離れた後、馬恩赫(マ・ウンヒョク)憲法裁判官候補者が参加した裁判官7人体制で、弁論再開や宣告期日指定についての話し合いが新たに行われる可能性も排除できない。

 一部では、国会側が尹大統領の弾劾訴追書から「内乱罪」を省いたことを問題にして「却下」を主張もしている。弾劾訴追書の内容が変わったのなら再度国会の議決を経るべきだったのに、そうしなかったのだから、弾劾訴追自体が適法ではない形で行われた-というものだ。一見では同意する。しかし却下決定に対しては、刑事上の「一度裁判した事件は二度と裁判しない」という一事不再理の原則が適用されないので、野党が再度弾劾案を発議することもあり得る。その分、社会の対立が深まる余地が大きい。

【グラフィック】尹大統領に対する捜査・弾劾審判に見る「手続き無視」

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲丁泰鎬・慶煕大学ロースクール教授、黄道洙・建国大学ロースクール教授、李鎬善・国民大学法学部教授(写真左から)

right

あわせて読みたい