韓国の小学校運動会 子供たちの歓声は騒音?【萬物相】 

 あるマンション団地横の小学校で、運動会開始前に児童たちが一斉に謝罪する動画がSNS(交流サイト)で話題になっている。運動場に集まった児童たちは運動会が始まる前に司会者の声に従い「すみません」「今日、私たちは少しだけ遊びます。ありがとうございます」と叫んだ。運動会がうるさいという抗議の声が相次いだため、まず謝罪した上で運動会を始めたという。

【写真】運動会で周辺住民に謝罪する小学校の児童たち

 子供たちが遊び回る声に対する抗議は日本でもたびたび話題になった。長野県では「公園で遊ぶ子供たちの声がうるさい」という抗議を受け2023年にその公園が撤去されたが、これは社会に大きな波紋を引き起こした。当時の小泉進次郎・環境大臣が国会で「子供たちの声は騒音ではない」と答弁したことを受け、「騒音」に関する法律の規定から子供たちの声を除外する手続きが今進んでいるそうだ。

 ドイツのベルリンでも子供たちの「騒ぐ権利」が認められている。ドイツでは法的に「静かにする時間」が厳しく定められている。平日は夜、日曜日は終日、隣人を不快にさせる騒音を出した場合は罰金が命じられる。ただし教会の鐘や救急車のサイレンなどは例外とされていた。ところがベルリンでのみ子供の遊ぶ声について役所などに年間数百件も抗議があり、一部では訴訟にまで発展したという。一連の事態を受けベルリン市は2010年、子供たちの声は騒音にしないとする条例改正を行った。

 逆の発想で子供たちが遊び回る権利をCFとして制作する企業も出てきた。KCC建設は2022年、画面いっぱいに子供たちが遊び回る公園の風景を写しだし、子供たちの楽しそうな話し声や笑い声だけの映像に「子供たちは静かに成長できない」というキャッチコピーが付いたテレビ広告を出した。この広告はユーチューブで数千万回再生され、子供たちが選ぶ「今年の映像賞」も受賞した。

 運動会がうるさいという抗議は実は最近のことではない。昨年はソウル市内のある小学校の運動会中に近隣のビルが騒音に抗議し警察に通報した。2022年には全北特別自治道全州市、19年には大田広域市のある小学校で近隣マンションの住民が騒音に抗議したため、運動会の規模縮小を余儀なくされたという。小学校が敷地内にあるマンション団地は価格が上がりやすいという理由で人気だが、小学校から聞こえる音は嫌というのは全くもって理解し難い。韓国では少子化の影響で全校児童がわずか数十人の小学校が増え、そのため複数の小学校が合同で運動会を開くケースが増えている。そんな国なのに人の心はあまりに薄情だ。子供たちの遊び声を最近流行の「ASMR(心理的安定に導く音)」の一つとして受け入れられないだろうか。

金珉徹(キム・ミンチョル)記者

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  • ▲イラスト=李撤元(イ・チョルウォン)

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