ただ、米国の構想は韓国との議論がかなり難航すると予想される。李在明大統領は大統領候補だった当時、中国による台湾侵攻の可能性を「宇宙人の地球侵攻」に例え、「我々は関係ない」と述べるなど、米国が描く構想と韓国政府の認識の差が大きいためだ。今回の韓米外相会談後、米国務省は「韓米双方は台湾海峡の平和と安定が国際社会の安全保障と繁栄に欠かせない必須要素であることを強調した」と発表したが、韓国外交部が発表した報道資料にはこの文言が抜けている。通常報道資料には各国が重視することを盛り込むが、韓米間の優先順位に差があることを示唆している。韓国政府関係者は「米国は米国の話をしたのであり、韓国は具体的な話ができる状況ではない。(韓国側は)そういうイシュー(台湾海峡問題)を持ち込まなかった」と話した。米国側が一方的に台湾海峡問題に触れただけで、韓国が積極的にそれに賛成したわけではないという意味だ。
李在明政権は韓米同盟を根幹とするものの、中国・ロシアとの関係も管理していく「実用外交」を掲げているが、中国との覇権争いに全ての資源を投じているトランプ政権がそれをどう受け止めるのかも未知数だ。韓国政府高官は「北東アジアの平和と安定のために中国に関与し、韓中日が協力することも非常に重要だ」と述べたが、それとは異なり米政界では韓国が米中間で明確な立場を取るべきだという声が高まっている。マスト米下院外交委員長(共和党)は最近、「双方を支持しようとする試みを侮辱と受け止める」と述べた。韓国は3年前に「キャンプデービッド合意」で制度化を始めたばかりの韓米日協力を除けば、米日豪印によるクアッド(QUAD)、米英豪によるオーカス(AUKUS)のような中国けん制を目的とする安全保障協議体には属しておらず、対中戦線の最も「弱い部分」に挙げられる。日本は韓半島と台湾海峡、南シナ海、東シナ海などを単一戦区とする「ワンシアター」構想を米国に提示し、積極的な役割を担おうとしている。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員、ヤン・ジホ記者